みんなが生きた証しを残したい――。東日本大震災で祖父母を失った岩手県の大学生が、犠牲者の遺族への聞き取りを進めている。自身も生まれ育った村で、犠牲者はどんな暮らしを送っていたのか。津波が来た時は。記録は冊子にして村の図書館で保存し、今後の防災に役立てる予定だ。
2011年3月11日。岩手大4年の佐々木心さん(24)は岩手県田野畑村の中学3年だった。校舎で揺れに襲われたが、内陸部だったので津波は見なかった。海に近い自宅にいた祖父の仙哉さん(当時82)と祖母のミナ子さん(同75)は家ごと津波に流された。ミナ子さんは20キロ近く南の港付近で見つかったが、仙哉さんは今も行方不明だ。
拡大する遺族から犠牲者の話を聞く佐々木心さん=2020年2月18日、岩手県田野畑村
進学した同じ沿岸の宮古市の高校では、被災体験を持つ同級生も多かった。祖父母のことも自然と話せた。ただ、大学は内陸の盛岡市にあり、被災体験のない同級生も多かった。「余計な心配をされたくない」。被災体験を話すことを避けるようになった。
大学で入ったゼミでは、被災者の調査をしたり、サロンを開いたりしていた。手伝うようになった佐々木さんは昨年11月、岩手県大槌町で息子を亡くした両親に出会った。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル