「日本語教育に関する法律案」が6月21日、参議院の本会議で原案通り可決、成立した。
外国人や海外育ちの日本人などが、日本語の教育を受けられる機会を最大限に確保できるようにするのが目的で、国や自治体、それに企業などの責任も明確にする。
日本語教育に法的な「後ろ盾」ができることで、日本語を教える教室の整備など、自治体が必要な予算を要求しやすくなるなどの効果が期待されている。
一方で、現時点ではあくまで「理念」を定めただけに過ぎず、どのように具体的な政策につなげていくかが課題だ。支援活動の現場にいる人たちは、今回の法律をどう受けて止めているのか聞いた。
現場にとっては「蜘蛛の糸」
日本語教師や弁護士などの専門家の集まりで、各地で外国人の支援にあたる人材の育成などを手がけている「CINGA(しんが)」の新居(にい)みどりコーディネーターは、「日本語を学ぶ権利を、自治体や企業が保障するための根拠法として、非常にいいこと」と大きな期待を寄せている。
新居さんは、自身も支援活動に携わる中で、外国人住民や外国ルーツの子供たちへの支援に、地域ごとに大きな格差が存在するのを実感してきた。
新居さん:
ある会社の総務課から電話があり、『外国人職員が転勤で家族を連れて日本に来るのですが、どの区に入れればちゃんと日本語教育受けられますか』と相談が来たこともあります。
外国人の場合、住んだ場所によって日本語教育の手厚さが変わります。
学校に入った時からコーディネーターがついて、計画を作ってくれて、着実に積み上げて日本語を勉強するパターンはある。
一方で、担任の先生しか見てくれずほったらかしの状態のところも。
そんな状態で日本語の理解は進まないため、『発達障害じゃないの』『高校に行くなら特別支援学校だよね』と言われるケースもあります。
日本語教育の手厚さだけで、その後の人生が変わってしまうということが、あっていいのかと思います。
このように、これまでは自治体や学校の担当者の熱意によって、子どもの将来が左右されてしまう状況があった。これが法整備によって、地域に関係なく均一な教育を受けられるよう改善される可能性がある。
しかし、問題はこれだけではない。
外国人住民や子供たちへの日本語教育は、自治体から補助金の交付を受けたNPO法人などが重要な役割を果たしてきた。一方、公的な支援が十分ではないケースもあり、綱渡り状態の運営を強いられる団体もある。
新居さんは、現状についてこう語る。
新居さん:
自治体と議論すると『頑張りたいですようちだって!でも、福祉などと比べれば優先度がいつも下がってきちゃうんですよ』って言われて、毎回終わるわけです。
行政職員が悪いわけじゃないんです。(行政側は)優先順位を考えるときに、根拠法があったり予算がついたりするものから実行していきます。
法律ができたならば、NPOや市民側は『こういう法律ができたから、是非頑張っていきましょう』と交渉できるかもしれません。
手綱というか、上から落ちてくる蜘蛛の糸というか、いくら喋っても何も(成果が)なくて双方ともガックリするんじゃなくて、法律があるからなんとか予算を引っ張ってきてみんなでやっていきましょう、と。
そういうことができる法律なんじゃないかなと思っています。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース