耳の聞こえない私が、かつて必死に練習した「エリーゼのために」――。岐阜県笠松町の加藤ゆかりさん(56)から、約45年ぶりにピアノを弾く喜びが朝日新聞生活面の投稿欄「ひととき」(2月7日掲載)に寄せられました。ピアノに向き合った日々をたずねに会いに行きました。
【動画】難聴の女性が弾く「エリーゼのために」 45年ぶりのピアノを楽しむ=山下奈緒子撮影
加藤さんは2歳の頃、抗生物質ストレプトマイシンの副作用で聴力を失った。補聴器をつければ、大きな音なら鳴っていることはわかるが、ドレミの音の違いなどはわからない。2歳から6年かけて50音の発声を学び、相手の口の形を読み取って会話をしてきた。
鍵盤との出合いは幼稚園のオルガン教室。友達が楽しそうな一方、自分だけ習わせてもらえない。耳のことなら何事もあきらめない母が、住んでいた岐阜市やろう学校に相談し、ようやく出会えたのが盲学校の音楽の先生だった。
「目の見えない者が、耳の聞こえない者に教dえるとはなあ」と戸惑いつつ、先生はたくさんレコードをかけた。その音は床を通して体に伝わった。「不思議な感覚でした」
ピアノは、先生が隣に立って三…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル