政府は21日の臨時閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針2019)を決定した。11日に固めた原案をほぼ踏襲し、国・地方の基礎的財政収支を25年度に黒字にするため、20年度政府予算の編成で社会保障費の自然増を高齢化による増加分相当に収める「目安」の設定を継続させる方向性を提示。社会保障の給付と負担の見直しは、次年度の課題としたが、夏以降に具体的な方策の議論を本格化させる。診療報酬について、民間議員が主張していた大胆な見直しは骨太方針2019で盛り込まず、「適正化・効率化を推進」という書きぶりにとどめた。【松村秀士】
政府は21日の経済財政諮問会議で骨太方針2019をまとめた。その後の臨時閣議後に記者会見した茂木敏充経済財政政策担当相は、社会保障の給付減や負担増といった単純な議論ではなく、給付と負担の両方を極力抑えた上で、社会保障や財政の持続可能性を確保する必要性を強調。今後のスケジュールに関しては、「参院選が終わると、まずは(20年度)予算編成の概算要求基準に向けた議論をしなければならない。その後、できるだけ速やかに(給付と負担の)議論をスタートさせる」と述べた。
骨太方針2019では、社会保障に関する基本的な考え方として、団塊の世代が75歳以上に入り始める22年までに社会保障制度の基盤強化を進め、経済成長と財政を持続可能にするためのベースづくりにつなげる。そのため、改革工程表の進行具合を検証しながら、改革を着実に進める。
具体的な取り組みは、▽給付と負担の見直し▽医療・介護制度改革▽疾病や重症化の予防・健康づくりの推進―が柱。給付と負担の見直しは、骨太方針2018や改革工程表の内容に沿って総合的に検討した上で、20年6月ごろに策定される骨太方針2020で「社会保障の総合的かつ重点的に取り組むべき政策を取りまとめる」とした。
医療・介護制度改革では、高齢化や人口減少、医療の高度化などを踏まえて、診療報酬や介護報酬の適正化・効率化を進める方針を示した。診療報酬については、5月31日の経済財政諮問会議で民間議員が、加減算双方向で大胆な見直しを行って病床機能の転換を進めるよう求めたが(関連記事)、これよりも緩やかな書きぶりとなった。
■公立・公的医療機関の再編統合にも言及
また、人口減少が進む40年に向け、国は地域医療構想の実現と医師の偏在対策、医療従事者の働き方改革を“三位一体”で進め、総合的な医療提供体制の改革を行う。
地域医療構想の実現への取り組みでは、公立・公的医療機関に関する具体的対応方針の内容が、25年に達成すべき医療機能の再編、病床数の適正化に沿ったものとなるよう、「重点対象区域」を設けて集中的に支援。併せて、適切な基準を新たに設定し、原則として 19 年度中に対応方針の見直しを求める。民間医療機関にも対応方針の策定を改めて求め、地域医療構想調整会議での議論を促す。
こうした取り組みによっても病床の機能分化・連携が進まない場合は、新たな都道府県の権限の在り方を20 年度に検討し、できるだけ早期に必要な措置を講じる。また、地域医療構想を実現させるため、必要に応じて消費税の財源を活用した病床のダウンサイジング支援の追加的な対策を取る。高齢者医療確保法14条に基づく地域別の診療報酬の設定に関しても、都道府県の判断につながるような具体的な活用策を検討するとの方針も示した。
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