横浜市の米軍根岸住宅地区内にある飛び地状の民有地で長年暮らしてきた佐治実さん(72)とみどりさん(68)夫妻が、日常生活が不当に制限されているとして、国に約1億1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、横浜地裁であった。長谷川浩二裁判長は、夫妻の生活に一定程度の制約が課されていることは認めつつも、「受忍限度を超える損害をもたらすものではない」として請求を棄却した。
判決などによると、終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が農地だった周辺を接収。経緯は不明だが、夫妻の自宅を含めた5世帯の住宅地が接収されずに取り残された。夫妻側は、地区外と自由な行き来ができないほか、土地の資産活用などで制限を受けていると主張。生活する権利を侵害され、その補償も受けられていないと主張していた。
長谷川裁判長は判決理由で、「米軍への供用に伴い、原告らの生活や土地利用について一定の制約が課され、その状態が長期間継続していることは否定できない」と認めた。一方で、夫妻には通行パスが発行され、一部の宅配業者や緊急車両が出入りできたことなどから、「米軍や国が原告らの生活に配慮した対応をしてきた」とも述べた。
その上で、「根岸住宅地区は安全保障のために駐留する米軍人らの住居確保のために提供されたもので、公共目的がある」と指摘。「生活や土地利用で一定の制約が課されているとしても、受忍限度を超えた違法な権利侵害には当たらない」と判断した。
同地区を巡っては、夫妻宅の近くに住む男性も同種の訴訟を起こしたが、地裁は昨年4月に請求を棄却する判決を言い渡し確定している。日米両政府は2018年11月、同地区の共同使用について協議を始め、具体的な返還時期の調整を進めることで合意した。防衛省は「判決は、国の主張について裁判所の理解が得られたものと考えている」とコメントした。
神奈川新聞社
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