香川県議会で3月18日、ゲームの利用時間を1日60分以内と定めた条例が賛成多数で可決、成立した。
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4月1日に施行されるこの条例(「県ネット・ゲーム依存症対策条例」)は、子どものゲームやネット依存を防ぐため、18歳未満の子どもに1日60分(休日は90分)、利用時間を中学生以下は21時、それ以外は22時までの利用を目安とする。罰則はない。
この条例に対しては違憲性を問う声もあがっている。憲法問題に詳しい作花知志弁護士は、「個人の自己決定権などに対する不当な干渉であり、憲法13条に違反している」「多数決で押しつけることは、人権の基本的概念に反している」と厳しく批判する。
以下、作花弁護士に詳しく聞いた。
●「不当な干渉」「憲法13条に違反している」
この条例は、憲法で保障されている個人の自己決定権、幸福追求権、プライバシー権に対する不当な干渉であり、憲法13条に違反していると考えています。
子がゲームをどのくらいの時間行うか、何時まで行ってよいかは、子とその親が決めるべき事柄であり、行政が決める事柄ではありません。その意味で、この条例は目的において合理性がないと考えます。
●飲酒や喫煙など「個人の自由を制限する法律」と何が違う?
なお、飲酒や喫煙などのように、国がいわば親のような立場となって、個人の自由を制限する法律は確かに存在します。
前提として、飲酒や喫煙が個人の身体にマイナスの影響を与えることは、科学的に解明されています。大人になれば、飲酒や喫煙は個人がコントロールできる範囲内と言えますが、子どもは未発達な存在であるため、個人ではコントロールできません。そのため、国が法律で未成年者の飲酒や喫煙などを規制しているのです。
それに対して、長時間ゲームを行うことによる身体的なデメリットは、科学的には未解明です。その前提が、飲酒や喫煙とは異なっていると考えます。
●「規制の対象が広がる可能性がある」
また、ゲームの時間を行政が決めるとなると、ではTVの時間も決めることができるのか、漫画を読む時間も決めることができるのか、など規制の対象となる可能性はどんどんと広がります。さらに香川県にとどまらず、他自治体へも波及する危険もあります。
憲法が人権を保障したのは、基本的には国や行政から個人を自由にするためです。憲法は必要以上に私生活への干渉を行政に許していないはずです。
元々、人権が保障されるとは「多数決では奪えないものがある」「多数決では決めることができないものがある」ことを意味します。
子がゲームをするのは1時間だけという方針が望ましいと考える家庭は、それを親子で話し合って採用すればいいだけです。行政が決めることを望んでいない家庭にまで、多数決で押しつけることは、人権の基本的概念に反していると思います。
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/
Source : 国内 – Yahoo!ニュース