静岡市内で知的障害者施設を運営する明光会(寺田千尋理事長)は、感染が疑われる利用者が発生した場合に備え、隔離棟の確保に踏み切った。法人史上初の試みで、施設内の集団感染を防ぐ狙いがある。
同法人の利用者は約230人(入所約90人、通所約140人)で、職員およそ130人で支援を行っている。
新型コロナの発生を受け、職員のマスク着用▽頻繁なアルコール消毒▽毎朝の検温▽職員によるマスク製作▽短期入所・日中一時支援の中止など、出来る限りの感染予防策を講じている。
ただ、利用者の中にはマスクの着用を嫌がる人や、症状を言葉で表現できない人もいる。感染すると重症化しやすいとされる、基礎疾患を持つ人や高齢の人もおり、万が一発生した場合の対応に気をもむ状況が続いていた。
3月下旬、BCM(事業継続マネジメント)対策委員会で、法人の敷地内にある建物1棟を「隔離棟」として活用することを決めた。
もともとは生活介護事業で使用していた建物で、日用品の保管場所にする予定だった。 職員が1週間かけて掃除し、4月上旬からの運用にこぎ着けた。
建物の面積は約100平方メートル。大部屋のほかに、トイレやシャワー、台所、更衣室も完備するため、ほぼ外出の必要がない。37・5度以上ある利用者の受け入れを想定。医療機関への受診など受け入れ後の流れは、保健所と相談して決める。
大部屋には住居の代わりとして、数年前に購入していた災害用テント4張を設置。利用者は必要最低限の荷物を持ち込み、ここで生活することになる。
テントは大人2人ほどが寝転がれるファミリーサイズだが、1人が1張を使うことで、「3つの密」(密閉、密集、密接)の防止にも役立てる。
定員(4人)を超えた場合の対応について、BCM対策委員会委員長の藁品啓・就労支援係長は「厳しい決断だが、通所施設を順に閉めるなどして、新たに隔離する場を設ける必要がある」としている。
■応援体制も整備
感染が疑われる利用者への介助や、職員自身が感染して欠員が生じた事態に備え、職員の応援体制も整備している。隔離棟では、通所の職員3~4人がローテーションを組み、常時1人が対応に当たる方針だ。防護服、ゴーグルを着用した上で、見回りや食事の提供、洗濯物の回収などをこなす。そのため、ここで働く職員は職場や家には戻らず、施設内に設けた専用の宿泊所で寝泊まりする。
また、入所施設では夜間の緊急事態を想定し、応援に入る職員の出勤表も別途作った。家庭の事情や通勤時間を理由に対応できない人を除く通所職員ら約30人で回す見通しだ。
4月20日現在、幸いにも隔離棟を利用した人はいない。藁品就労支援係長は「(隔離棟は)入所職員には心強い存在だと思う。ただ、隔離棟があっても想定の更に上を行く事態に陥る可能性もある。一層気を引き締めていきたい」と力を込めた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース