文部科学省は1日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校中の学校の段階的再開に向け、小1、小6、中3を優先的に登校させるなどの取り組み案を示したガイドラインを公表し、都道府県教育委員会などに通知した。一方、政府は休校の長期化を踏まえ、入学時期をずらす「9月入学制」をめぐる検討に入り、関係省庁が課題を精査した上で6月上旬の論点整理を目指す。
萩生田光一文科相は同日の閣議後会見で、感染症との「付き合い」が長期化するとの認識を示した上で、「じっとしていては何も解決できない」と指摘。感染リスク低減と学校教育の両立を図る必要性を強調した。
ガイドラインでは休校を続けざるを得ない場合、1クラスを複数グループに分け、使用していない教室を活用するなどして密接状態を防ぐほか、登校する学年やクラスを日時によって変えるなど工夫して登校日を確保することを提案。スペースや教員を確保できない場合は、卒業や入試が迫る小6や中3、教員による対面での学習支援が特に求められる小1の登校日を優先的に設ける案も示した。
また、感染リスクが高いとされる調理実習や密閉空間での歌唱指導、密集を伴う運動などの授業実施を当面見送るほか、配膳の過程での感染を防ぐため、給食を弁当容器に盛り付ける案なども盛り込まれた。
一方、萩生田氏は9月入学については、「今後の状況を十分に見定めて考える」と述べるにとどめた。
文科省が公表した学校の段階的再開に向けたガイドラインは、自治体などに感染防止と学校教育継続の両立を強く促す内容となった。緊急事態宣言の期間が延長される見通しから既に休校を継続する地域も目立つが、学習の遅れに対する焦燥感は確実に高まっており、自治体側は学校再開に向けた難しいかじ取りを迫られている。
「国としての責任を回避するつもりはないが、地域の実情を見極めて判断するしかない」。萩生田氏は1日の閣議後会見でこう述べ、自治体側に判断を委ねた。一方、政府は7日以降も全国で緊急事態宣言を延長する方針で、自治体側には困惑が広がる。
「感染者ゼロ」の岩手県では、盛岡市の小中学校が7日から授業を再開する方針。しかし、緊急事態宣言が延長されれば、休校継続も検討するという。市教委の担当者は「判断の根拠を保護者側に説明しなければならない。休校や再開の目安となる一定の基準を示してほしい」と訴える。
「特定警戒都道府県」とされた埼玉や兵庫、茨城などは県立校の5月末までの休校継続を決めている。茨城県では一部の学校で夏休みを削っても授業日数が不足するため、休校期間は6月半ばまでが限度だが、県教委は「授業再開は見通せない」と焦りを募らせた。
緊急事態宣言後の4月22日時点で、全国の小中高校などの9割超が休校。授業再開を見据える文科省の意向とは裏腹に、緊急事態宣言が休校措置に拍車をかけている向きは否めない。
千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「休校継続を決めている地域も多く、今回の指針は後手に回った印象を与える。学校での感染リスクを明示するなど、自治体が円滑に休校や再開を判断できる基準を早急に示すべきだ」と指摘している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース