新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外出、移動の自粛が広がる2020年の大型連休。改元のムードに列島が包まれた2019年とは対照的な風景を、私たちは目にしています。
去年と今年、同じ場所を同じ画角で切り取ると、変化は一目瞭然。写真の中にある線を動かすことで、去年と今年の写真を見比べることができます。全国各地の様子を取材していきます。
フジの花の名所、今年は無人
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、臨時休園中の栃木県足利市の「あしかがフラワーパーク」では5月1日、フジの花が最盛期を迎えていた。
昨年のこの時期、樹齢150年を超える「大藤」の周りは大勢の行楽客で大混雑していた。今年は無人の静寂の中、白や紫色の花々の甘い香りだけが漂っていた。
同園はフジの花の名所として有名で、昨年4、5月には約77万人が来場した。
岐阜県関市の平成(へなり)地区
平成と書いて「へなり」という地区が岐阜県関市にある。昨年4月30日、令和へと元号が変わる平成最後の日には、雨にもかかわらず、「道の駅平成」には約1万人が訪れた。臨時休業している現在、使えるのは駐車場とトイレだけだ。
裏山には、平成と令和をつなぐ「しあわせの架け橋」がある。昨年は俳優の三田佳子さんを招いたイベントもあり、橋を渡ろうとする人たちが長い列を作った。
好天に恵まれた今年の4月30日。橋を訪れる人は少なく、2時間ほどの間にやって来たのは4人だけだった。風の音と鳥のさえずりが聞こえるほかはひっそりとしていた。同駅を運営する会社は、今年もイベントを企画していたが断念したという。
橋の中央には大きな石の玉があり、そばには小さな踏み台が置かれていた。玉をさわりたい子どものためらしいが、いつ誰が置いたのかは不明だという。何も気にせず、ベタベタと石をさわれる日々は、果たしていつ戻ってくるのだろうか。
「令和」ゆかりの地 坂本八幡宮
新元号「令和」ゆかりの地として注目を浴びた福岡県太宰府市の坂本八幡宮。
昨年のGWは10連休だったこともあり、参拝客が急増。「令和」と書かれた額縁を手に記念撮影する人が後を絶たず、参道には行列ができた。同市によると、10日間で約10万人が訪れた。
今年は、新型コロナウイルスの影響で2月27日から社務所を閉めた。大型連休に入り、近隣の駐車場も閉鎖。改元から1年を迎えるが訪れる人は少なく、30日も散歩やウォーキングで立ち寄る人の姿が見られる程度だった。
東京・渋谷 スクランブル交差点
5月1日で天皇、皇后両陛下が即位し、元号が令和になって1年となる。改元前日だった昨年の4月30日、東京・渋谷は、雨にもかかわらず、大勢の若者らでごった返していた。スクランブル交差点には信号が変わるたび、横断する人たちの「傘の花」ができた。夜には、車上から歩行者に注意を呼びかける「DJポリス」も登場。日付がかわると歓声が湧き、令和コールが起きた。
一方、今年の4月30日。新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言が発令され、外出自粛が呼びかけられている。昨年と違って好天にもかかわらず、スクランブル交差点を行き交う人の数は少なかった。
成田空港の旅客は98%減
昨年の大型連休中(4月26日~5月6日の11日間)、約109万人が利用し、混雑した成田空港。
発着便が大幅に減った今年、出発ロビーに利用客の姿はほぼ皆無。時々流れる出発案内のアナウンスと、観光PRの映像にのせた音楽だけが、がらんとした館内に響いていた。
成田国際空港会社(NAA)によると、4月1~25日に発着した国際線旅客便数は1852回(昨年比マイナス85・1%)、出国旅客数は1万9800人(同98・3%)。一日平均にすると、発着は74回、旅客は792人まで減っている。
「旅客が大幅に減少し、推計が非常に難しい」として、例年行う連休中の利用状況の発表を、今年は見送る事態になっている。
関空、国際線発着わずか1往復
例年は大型連休を海外で過ごす人たちでにぎわう関西空港だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で29日も国際線の多くが運休し、閑散としていた。
この日、関空を発着したのは台湾便の1往復のみ。ターミナルの照明は暗く、国際線のチェックインカウンターに人の姿はなかった。航空機の運航を知らせるモニターの一部も消えていた。
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この企画は、朝日新聞映像報道部が取材・構成しました。「ツイッター」(https://twitter.com/asahi_photo)や、「インスタグラム」(https://www.instagram.com/asahi_photo/)でも、撮影した写真や動画を紹介しています。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル