自民党の河井案里(あんり)参院議員(46)=広島選挙区=が初当選した昨年7月の参院選をめぐる公選法違反(買収)事件で、広島地検は今年4月以降、夫で前法相の克行衆院議員(57)=自民、広島3区=らから流れた多額の現金の解明に向け、複数の地元議員らの関係先を捜索するなど積極的な捜査を展開している。これまで100人前後の関係者から任意で事情を聴いたもようだが、議員らが認めた受領額は一人数十万円程度。地検は現金の趣旨を一つずつ精査しており、全容把握に時間を要している。
「一人一人の受け取った金額が少ない。数百万円レベルでないと立件は難しいのではないか」。国会議員を立件するハードルについて検察OBはこう話す。地元・広島の複数の県議、市議らが今回、地検の聴取に克行氏らから直接現金を手渡されたと認めたが、その額は多くて数十万円程度。ある検察幹部は「一人分だけの立件では、受け取った側の供述の信用性が担保できないこともある」とも指摘しており、地検は複数人分を積み増しして立件を目指しているもようだ。
地検は聴取と並行して4月9日、案里氏が県議時代に同じ会派だった渡辺典子県議と桧山俊宏県議の事務所などの家宅捜索に踏み切った。以降も別の県議や広島市議、前安芸高田市長の自宅などを捜索。同28日には県議会棟内の渡辺、桧山両氏を含む県議3人の会派控室を捜索した。
ただ、捜索が判明した8人のうち7人は受け取りを否定。残り1人は受領を認めたものの、参院選の選挙運動との関連を否定している。しかも河井夫妻から現金が配られたとされる時期は、昨年4月の統一地方選前後から参院選後の同8月ごろまでと幅広く、現金が選挙運動の対価だったかどうかという趣旨の立証が課題となっている。
公選法に詳しい弁護士は「供述以外にどのような証拠があるかがポイントだ。議員だと自分の立場を守るため、公判で供述を覆すことも考えうる」とする。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「なぜ今、捜索する必要があるのか」という事件関係者の声もあるが、法曹関係者は「時間をかけすぎると『証拠崩れ』の危険もある。やむを得ないのではないか」と話す。
関係者によると、最高検も今回の現金買収疑惑の事件化には積極的な姿勢という。ある幹部は「前法相が地元政界に現金をばらまいていたのが本当なら、過去にない、とんでもない事件だ」と話している。
【関連記事】
Source : 国内 – Yahoo!ニュース