新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の期間が延長されてから初めての週末を迎えた9日、休業要請が緩和される地域では観光施設や店舗に客足が戻り始めた。栃木県の宇都宮市では、名物のギョーザ店が営業を再開したり、再開への準備を本格化させた。アクリル板を立てるなど「新しい生活様式」に沿った模索が続く店内で、店員らは「仕事ができてうれしい」と笑顔で汗を流した。(岸 良祐)
市の中心部で通称「餃子(ギョーザ)通り」に店を構える人気店「悟空」は、13日ぶりに営業を再開。午前11時~午後2時までの時短営業ながら、ギョーザを焼く女性店員からは「仕事ができるうれしさ、お客さんとの会話が好き」と笑みがこぼれた。
訪れた家族連れやカップルら約40人には、感染予防のため可能な限り“1席飛ばし”で座るよう頼んだ。店員は「お客さんが来てくれるか不安だったけど、店を開けて良かった」と胸をなでおろした。今後はビニールの仕切りを張る予定もあるという。
栃木県はあす11日から、休業要請を大幅に緩和する方針。接客を伴う飲食店やライブハウスなどは引き続き休業を求めるが、大半の施設や店舗は感染防止策の徹底を条件に営業再開を認める。ギョーザ各店も、厚生労働省が発表した行動指針「新しい生活様式」に沿って工夫をこらした。
市内35店の味が楽しめるアンテナショップ「来らっせ本店」は、新しい生活様式に挙げられた「対面ではなく横並びで座ろう」の項目を満たすため、テーブルを壁にベタ付けしたり、アクリル板を中央に立てた。
「おしゃべりは控えめに」との項目もあり、運営する宇都宮餃子会の鈴木章弘事務局長(47)は「大声で話す人には、注意することもある」という。
このほか、テーブル間はロールカーテンを引き、椅子は1席ずつ飛ばすよう配置した。本来60人座れるが、40人以下になるようにしたという。
また県外からの来店が予想される週末は、デリバリーと持ち帰りのみ対応する。隣県の埼玉と茨城は感染拡大が進む特定警戒都道府県に指定されており、県外客から感染が広がる可能性を懸念しての措置だ。
経済的ダメージは深くなる一方で、いつまでも自粛してはいられない。「家賃や人件費的に経営は苦しいが、雇用は守りたい。お客さんに対して、今の営業体制はもどかしいが、宇都宮のため苦渋の決断です」と鈴木さん。できる限り“コロナ前”のような営業を目指す。
≪栃木の感染者 関東7都県で唯一の2桁台≫栃木県内の感染者は、8日現在で56人。関東7都県で唯一の2桁となる。県内では、2月22日に最初の感染者を確認。4月6日以降は連日2~6人が確認されたが、同27日以降は10日連続で新たな感染者が出なかった。ただ、7日に60代女性、8日に70代男性の感染が明らかになった。2人は宇都宮市の夫婦だった。
≪「特定警戒」以外34県 休業要請でばらつき≫13の特定警戒都道府県以外の34県は、休業要請について全業種解除から、現状維持まで対応にばらつきがある。新規感染者数が抑えられている宮城や香川など7県が全面解除を実施済みで、秋田や佐賀、宮崎の3県も予定している。映画館や博物館、商業施設を休業要請の対象から外した静岡のように、10県が一部解除を実施した。山形や愛媛など8県も実施予定。福島や群馬、奈良、沖縄の4県は、休業要請を継続する。感染拡大が続いていることや、県外の往来を考慮した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース