イベントを始める直前のことだった。家電量販店の入り口で、責任者の高橋竜矢さん(31)は古い携帯電話をカバンから取り出した。高校生のころに使い、バッテリーの切れた折りたたみ式の黒い機種。わけあって、少しすすけていた。
拡大する残っていた母親とのメール=愛知県岡崎市
充電ができなくなった来客の携帯を復活させ、保存していた写真などをプリントしてあげる企画で、スタッフに手順を教えていた。自分でやってみせながら、ひそかに期することがあった。「写真でもメールでもいい。何か残っていれば」
昨秋の夜。愛知県半田市にある自宅が突然、炎に包まれた。煙に巻かれ、雨どいを伝って2階から必死に逃げた。同居していた両親が搬送先で亡くなったと告げられたのは明け方。夢なのか現実なのか。「はい」としか答えられなかった。
何とか助け出せなかったのかと自分を責め、もっと旅行に連れて行けばよかったと過去を悔やんだ。
両親の新婚旅行、七五三、弁当…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル