コロナ禍で客が減ったなじみのラーメン店を助けようと、近くの日大芸術学部(日芸、東京都練馬区)の卒業生が、ツイッターで資金を募るプロジェクトを立ちあげた。集まったお金を店に渡し、その分で現役学生にタダで食べてもらう仕掛けで、「思い出の味」を後輩と共有している。
「#五十三家(いそみや)おごってやるよ」。そんなプロジェクトが進むのは、西武池袋線江古田駅前の「横浜家系らーめん五十三家」。武蔵大や武蔵野音楽大に近く、学生でにぎわっていたが、新型コロナウイルスの影響で大学の休講が相次ぎ、売り上げが激減した。
店長の五十嵐恵三さん(53)は3月、「経営難のため営業時間を延長する」と、苦境を交えてツイッターに投稿した。卒業後も折にふれ店を訪ねてきたIT企業社員の柏原平志朗さん(27)は投稿を見て、「SNSで卒業生に1万円ずつ出資を募り、後輩への『前払い金』として店に渡せないか」とひらめいた。まずインスタグラムで「後輩におごりませんか?」と発信。十数人の卒業生が出資に名乗りを上げた。
柏原さんは店を訪ねて「五十三家がなくなると困る」と趣旨を伝え、五十嵐さんは「ありがたくて泣きそうだった」。1週間後、出資者16人でプロジェクトを始めた。日芸の学生証を提示すれば、720円の「ラーメン並」1杯を無料で食べられる仕組みだ。
初日に来店した学生2人は「明日が卒業なんです」。五十嵐さんは店内のノートに先輩へのメッセージを書いてもらい、以来、プロジェクトで訪れた全員に記帳をお願いしてきた。
5月初めまでに60万円が集まり、「おごられた」学生は100人を超えた。五十嵐さんは「しっかりした仕事で厚意に報いたい」。柏原さんは「僕も先輩におごってもらった。学生時代の『思い出の味』を、多くの人と共有できてうれしい」と笑顔で語った。(浜田奈美)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル