新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外出自粛が呼びかけられるなか、商店の棚から意外なものが消えている。強力粉、植木鉢に修繕用具といったものだ。一時、全国的に品薄となったトイレットペーパーなどのパニック需要とは異なり、キーワードはDIY(Do It Yourself、手作り)。巣ごもりでさまざまな我慢を強いられる日々を、少しでも楽しみながら乗り越えようとする暮らしの工夫がみえてくる。(荒船清太)
年長の長女を筆頭に3人の子供を抱える東京都内に住む主婦(37)が、店にある商品がないことに気づいたのは数週間前のことだった。
「ずっと家でテレビやままごとでは飽きるので、娘とホットケーキを作ろうと思いました。新型コロナが広がる前もたまに作っていましたが、ホットケーキミックスが棚からなくなっていて…」
見当たらないのはホットケーキミックスだけではない。パンやピザ作りに使う強力粉が棚から一時的になくなることも珍しくなくなっているという。
製粉大手「日清製粉グループ」によると、外出自粛が続く中、パン店やピザ店向けの業務用強力粉の需要は前年に比べて落ち込んでいるが、家庭用強力粉の需要は逆に伸びている。
広報担当は「パスタなどの家庭料理が増えたほか、パンなどを家庭で手作りする『おうち需要』が伸びているとみている」と説明する。ただ、供給は安定しており、ほどなく棚に補充されるという。
ホームセンターで売れ行きが好調なのは植木鉢や苗などの家庭菜園商品だ。
ホームセンター大手「ビバホーム」の担当者によると今春は例年より肌寒かったため、本来なら家庭菜園需要は落ち込むところだが、「トマトやナスの苗、植木鉢、スコップなどの売り上げが昨年より上がっている」という。
一方で、これまではニッチ(隙間)のように限られた市場での商品として、品薄とは無縁だった雑貨も売れ始めている。なかでも、「金接ぎ用具」がその代表格といえる。
「東急ハンズ」の広報担当者によると、欠けた陶磁器を修復する金接ぎ用具は3月ごろから売れ始め、売れ行きは前年の倍以上。修復用具としてはスニーカーの汚れ落としなども売れているという。担当者は「家で没頭できることを始める動きがあるのではないか」と分析する。
大型連休中も旅行控えで、「温泉に行けなかった」という反動からか、各地の温泉を再現した入浴剤なども売れ筋商品に。このほか、室内用の運動器具や、室内でも大声を出してストレスを発散できる防音装置付きのメガホンも、実店舗が一部休業しているなかで、インターネット通販では品薄の状態が続いているという。
休校を受けて、学習用のドリルも売れている。
小学2年の長女(7)と長男(3)を育てる都内の会計士の女性(40)は休校が決まってすぐにドリルを買い込んだという。
「普段は勉強は学童保育に任せっきりだったが、個別に指導すると、あっという間に伸びる」と話している。
■農水相「小麦の在庫は十分」
小麦粉やホットケーキミックスなどの食品がインターネット上で、高値で転売されているとして江藤拓農林水産相は記者会見で「極めてけしからんことだ。小麦の在庫は十分にある」と述べた。
小麦については、安定供給のため、米国やオーストラリアなどから国が一元的に輸入している。農林水産省によると、外国産小麦の備蓄は約93万トンあり、国内需要の約70日分に上るという。
江藤氏は製粉メーカーも供給体制を強化していると指摘、「転売により、足りていないのではという誤った不安をあおることになる」と懸念を示した。
菅義偉官房長官も記者会見で「メーカーは連休中もフル稼働で生産、供給すると聞いている」と説明、落ち着いた購買行動を呼び掛けている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース