6月に入り、国内の新型コロナウイルスの感染は落ち着きを見せている。
1月~5月までの統計で欧米や南米諸国と比較すると、明らかに日本人の死亡率は低かった。当初、欧米メディアは「死者を隠蔽している」「検査を絞っている」などと批判したが、最近では手のひらを返したように論調は一変している。
麻生太郎財務相は4日、国会で「『お前らだけ、薬持っているのか』とよく電話で言われ、『おたくとは国民の民度のレベルが違う』と言ってやると、絶句して黙る」などと答弁し、波紋を広げた。「民度」は生活や文化的水準などを指す言葉だが、死亡率が低い要因は複数あるとみられている。
ノーベル賞受賞者の山中伸弥京都大教授は死者数が少なかった要因を「ファクターX」と呼び、その解明が今後の対策の鍵を握るとみている。日本の人口100万人あたりの死者数は7人。米国は327人、英国、スペインが580人と続く。欧米諸国と東アジアは明らかに違いがある。
当初、日本の感染防御は中国や欧米の実態を参考にしてきた。その実態通りなら、対策を取らない場合、「日本では42万人が死亡する」という推計も出たほどだ。死亡率が低い理由はいずれも仮説だが、以下のようなものがある。〈1〉遺伝的な違い〈2〉免疫状態の差〈3〉ウイルスの違い〈4〉生活習慣の違い〈5〉医療体制や公衆衛生上の違い―など。
実態解明には長い時間がかかるが、秋から冬にかけて予想される第2波、第3波が来た場合、政府はこうした事情も考慮に入れる必要がある。 最近、インターネットを中心に、政府に協力した感染症専門家への批判が相次いでいる。「予測が過大だった」、「安全側に偏っていた」などだ。だが、それは結果論にすぎない。
「新型」のウイルスである以上、警戒を強めるのは当然のこと。何より結果に対し、責任を負うのは政治や行政だ。今後、事前の予測が外れれば、修正を繰り返すという「朝令暮改」で問題はないのだろう。「ファクターX」を探しながら、ワクチンや治療薬の開発を進める。祈るような気持ちで専門家の活躍を見守っている。(記者コラム・久保 阿礼)
報知新聞社
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