軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして「大川原化工機」(横浜市)の社長らが逮捕、起訴され、その後に起訴が取り消された事件で、同社の社長らが捜査の違法性を主張し、国と東京都に賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁で言い渡される。裁判は、捜査を担当した警視庁の現役警察官が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言するなど、異例の展開を見せた。 警視庁公安部や東京地検が適切な捜査や検討をしていれば、逮捕や起訴に至っていないかどうかが争点だ。具体的には、輸出規制を定めた国の省令の解釈と、警視庁公安部が実施した実験が十分だったかどうかが焦点となっている。 同社が輸出した噴霧乾燥機の輸出を規制する要件は、経済産業省の省令に定められている。要件の一つ「定置した状態で内部の滅菌または殺菌ができるもの」の定義について、経産省も明確な解釈を持っておらず、公安部は複数の有識者から聴取。独自に解釈を打ち立てたとして、原告側はこの解釈は誤りと訴える。 解釈の根拠の一つとなった公安部作成の「捜査メモ」に疑義が出ている。メモに発言が記されている四ノ宮成祥・防衛医科大学校長は、陳述書で「私の考えと異なる点、私の意図から外れて曲解されている点、私が話していない点が散見される」と指摘。朝日新聞の取材に「警察の作文だ」と述べた。「目標に達さない実験結果、記載せず」捜査員が証言 争点の二つ目は公安部が実施した実験だ。 公安部は実験の結果、噴霧乾燥機の内部では一定以上の温度が保たれ、大腸菌などを死滅させられるとして、規制要件に触れると判断。原告側は、公安部が規制に抵触することを証明するには不十分と知っていたにもかかわらず、追加実験を行うなどの適切な捜査を怠ったと主張する。 捜査の過程で、同社関係者から「測定口」と呼ばれる温度が上がりにくい部分があるという指摘が複数出ていたが、公安部はこうした意見を受け入れなかったとされる。 裁判では、証人出廷した当時の捜査員が、機械内部の温度の測定実験をした際、実際は3カ所測定したのに、目標に達しなかった1カ所を捜査報告書に記載しなかったという旨の証言をした。 別の捜査員は、記載しなかった1カ所は実験に協力した企業が自主的に測ったものとして、捜査の違法性を否定したが、後にその企業の社長が「温度測定を申し出た事実はない」とする報告書を裁判に提出した。 一方、国や都は、原告側が指摘する規制要件の解釈や実験について、訴訟で「不合理ではない」などと主張している。 起訴後、同社側は実験を72回実施し、機器内部に温度が上がらない場所があることを証明。検察は「殺菌能力を立証するめどが立たない」として起訴を取り消した。(比嘉展玖)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル
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