903グラムで生まれた自分 救ってくれた病院を訪ねた高校生(高校生新聞オンライン)
本を読んで得た気付きや、行動したことを織り交ぜて感想文をつづる昨年度の「全国高校生読書体験記コンクール」(一ツ橋文芸教育振興会主催)で、9万6805編の応募作品の中から久保田琉仁君(福井・藤島高校現3年)が文部科学大臣賞に輝いた。 903グラムで生まれた自分 昨春に「いつか貴い陽のしたで」(辻聖郎著)を読んだ。同書は、生後2カ月で亡くなった超低出生体重児(1000グラム未満)の記録を追ったノンフィクション。現在は健康に過ごす久保田君自身も、実は出生時、体重903グラムの超低出生体重児だった。「(同書で語られる)貴陽君は、出生時764グラムで、自分が生まれた時と体重が近い。わずかな体重差で、生と死が分かれてしまったことに心を強く揺さぶられました」 救ってくれた病院へ 読後、自身のルーツを知りたいと思い、生まれた病院の再訪を決意。そして、出生地の沖縄県石垣島を、昨夏の家族旅行の行き先にしてもらった。 旅行前、訪問のアポイントを取ったところ、当時の担当医師が現在も在職中であることが分かった。「担当医から快く歓迎されてうれしかった」 病院では、自分のカルテ(診療記録)を見せてもらい、出産に立ち会った当時の看護師を紹介された。超低出生体重児として3カ月間過ごした場所に思いをはせた。「16年前、この方々のおかげで自分の命が救われたと感動しました」 新生児特定集中治療室を特別に見学し、胸に詰まった。その際、偶然居合わせた初老の女性に、亡き祖母の姿を重ねた。「超低出生体重児の僕を見て祖母は嘆き悲しんだと、母から聞いていたんです。超低出生体重児を見つめ涙する女性に声を掛け、僕の生い立ちを話しました」。自身の祖母には、小学校入学前までの元気な自分を見せられたという。 その後、石垣島での経験を顧みながら読書体験記を3日間で執筆。生と死がテーマとなるが、「冒頭に、沖縄の美しい空や海の描写を加え、重々しいばかりの内容にならないよう工夫しました」。そして将来は誰かの命を救いたいと考えている。「医療の道に進みたいです。病院の少ない離島での医療に携わりたい」 (中田宗孝) 【関連記事】 Source : 国内 -…