安倍晋三首相はトランプ米大統領との27日の会談で、改めて北朝鮮の非核化のため緊密に連携することで一致し、政権の最重要課題である拉致問題の解決への強力な支持を取り付けた。焦点の一つだった2国間貿易問題をめぐる協議は先送りされたが、両首脳は会談を通じて揺るぎない日米同盟の姿を国際社会に発信した。 「令和時代に入っても日米同盟の絆が強固であることを鮮明に内外に示すものとしたい」 首相は首脳会談の冒頭、今回の外交の狙いについてこう語った。政府高官も会談前に「今回の首脳会談は日米関係をさらなる高みに引き上げる最高のチャンスだ」と期待を示していたが、両首脳の共同記者会見を見る限り、おおむね達成されたようだ。 「心が引き裂かれるような話だった。引き続き拉致被害者を帰国させるための日本の努力を支持する」 トランプ氏は共同記者会見でこう述べ、会見直前に面会した拉致被害者家族に対する率直な心境を吐露し、「首相にとって最優先課題であることはよく分かっている」とも語った。 トランプ氏の来日は天皇陛下のご即位を祝う儀礼的な側面が強かったが、条件をつけず北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と向き合う決意を示す首相の傍らで全面的な支持を約束したことは、強いシグナルとして北朝鮮に届いたに違いない。 2人が並んで会見した模様は世界中に配信された。外務省幹部は「非常に大きな意味のあるメッセージになっている」と分析する。 首脳同士の信頼関係の基礎となっているのが日米の同盟関係だ。首相は共同記者会見で「平和安全法制により、日米は互いに助け合うことのできる同盟となり、その絆は盤石なものとなった」と述べ、平成27年成立の安全保障関連法が日米同盟の強化に寄与したとの認識を示した。トランプ氏も「米国と日本の同盟関係は盤石だ」と呼応した。 会談では、同盟のさらなる深化をうかがわせる場面もあった。首脳同士が通訳だけを同席させた「テタテ」と呼ばれる1対1の会談に、谷内正太郎国家安全保障局長とボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が同席した。これまでにない対応で、両首脳は核合意をめぐり米国が対立するイランに関し、日本が仲介役となることなどを含め突っ込んだ議論を交わし、2人の意思を実務者に直接伝えたとみられる。 両首脳が28日、海上自衛隊の護衛艦「かが」を視察するのも、日米の強固な同盟関係を背景に航行の自由などを重視する「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する狙いからだ。 経済分野でトランプ氏は「今、信じがたいほど大きな貿易不均衡が存在している」と不満をストレートに表明した。とはいえ、トランプ氏が26日、貿易交渉に関し「(夏の)参院選までは交渉の多くのことで取引を待つ」とツイッターに投稿したのも、首相が培ってきた個人的な信頼関係の裏返しと見ることもできる。 夏の参院選以降、貿易不均衡に対する米側の改善要求が先鋭化する可能性は否定できないが、そのときこそ新時代の日米関係の真価が問われる。(原川貴郎)Source : 国内 - Yahoo!ニュース
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