孤立・絶望…「拡大自殺」か 「死ぬなら一人で」という非難は控えて(産経新聞)
川崎市多摩区の殺傷事件をめぐっては、岩崎隆一容疑者(51)が児童らを襲った直後に自殺したことから、無関係な人を道連れにした「拡大自殺」だったとの見方も出ている。孤立感や絶望感を深めた末の無差別殺傷事件は繰り返されてきた。理不尽な悲劇の連鎖はどう生み出されるのか。【現場状況図】事件現場では何が起きていたのか 「他人を巻き込んだ『拡大自殺』だったと考えられる」。岩崎容疑者が襲撃から十数秒後に自ら首を刺し、自殺を図ったことについて、精神科医の片田珠美さんは、こう推測する。 高齢の伯父夫婦と同居し、引きこもる傾向にあったという岩崎容疑者。片田さんは「人を殺したいという願望よりも、最初にあったのは非常に強い自殺願望だったのではないか。人生に強い不満を抱く一方、不遇を世間や他人のせいにする他責的傾向があったのでは」とみている。 警察庁によると、自由に出入りできる場所で不特定多数を殺害する「通り魔」事件は、平成19年から28年までの10年間に計73件発生。「死にたかった」「死刑になりたかった」と動機を語るケースも少なくない。 茨城県土浦市で20年3月、面識のない男女8人を包丁で刺して死傷させた男は逮捕後、「確実に死刑になるために複数人を刺した。誰でもよかった」などと供述した。 東京工業大の影山任佐(じんすけ)名誉教授(犯罪精神病理学)は「やり直しのきかない年齢で生活に行き詰まり、人生に決着をつけようとしたのではないか。環境や親の愛情に恵まれた児童らへの妬みや絶望感から、命を奪おうとしたのでは」と分析。「社会的に孤立し、自殺を考えている人に手をさしのべる態勢づくりが大事だ」と続けた。 一方、事件を受け、インターネット上では「死ぬなら1人で死ぬべきだ」「人に迷惑をかけるな」といった書き込みが相次いだ。 これに対し、生活困窮者支援などを行う「NPO法人ほっとプラス」代表理事の藤田孝典さんは「次の凶行を生まないためにも、『1人で死ぬべきだ』という非難は控えてほしい」と発信した。 藤田さんは「格差が広がり、『自分は価値がない存在』と感じている人が大勢いる。ネットでのこうしたメッセージが社会に恨みを募らせる人々をさらに追い詰める可能性がある。悩んでいる人間が相談や支援を受けやすい社会をつくる努力を続けていく必要がある」と意図を説明した。Source : 国内 - Yahoo!ニュース