ひとりひとりが「個」として生きる意識を持つ 嘉田由紀子さんに聞く「選択的夫婦別姓」のはなし【4】(選挙ドットコム)
家族の形や女性の活躍、少子化問題や憲法改正など、様々なテーマにもつながる「選択的夫婦別姓」の是非について、インタビュー形式で、さまざまな立ち位置の方の声を紹介する当連載。 4回目となる今回は、元滋賀県知事で参議院議員の嘉田由紀子(かだ・ゆきこ)さんです。環境社会学を専門に博士号を持つ嘉田さんは、アメリカの大学院留学時代に長男を出産。帰国後、「女は家を守れ」が主流だった当時の日本で、「社会を変えたい」と県知事に出馬し、2期8年務めたのち参議院議員に。そんな嘉田さんは夫婦別姓についてどう捉えているのか?お聞きしました。選挙ドットコム:嘉田先生は海外の文化にもお詳しいということで、まずは世界のほかの国や地域で家族制度や夫婦の姓はどうなっているかお伺いできればと思います。 嘉田由紀子議員:欧米諸国ですが、まずドイツはもともと日本の家制度に近いです。父系で父親に権威をもたせる。でも結婚時の姓は選択できます。フランスはどちらかというと夫と妻とが対等。同姓にする場合の姓は夫方が多いが、選択が許されるので、妻の姓を選ぶこともできます。 アメリカは移民社会ですから、市民がそれぞれ自国の伝統を担っていて、もともと家族制度が多様なんです。夫婦同姓も別姓も、ミドルネームをどうするかもいろいろ選択肢があります」 選コム:アフリカに滞在された経験もおありとのことですが、アフリカではどうでしょう? 嘉田氏:私が1971年に半年暮らしたアフリカの村は、牧畜民や農耕民社会でしたが、一夫多妻の家族も多かったです。妻たちは自分の家を持っていて、お父さんはそこを1日ずつ泊まり歩く。父系社会では、父親の名前を自分の名前の後ろにつけます。日本でいう「家」という感覚ではないです。 同じアフリカのマラウィでは、1990年代から調査に入りましたが、母系社会。子どもは母方の系列の名前を継ぐ。母親の系列で財産も移っていきます。 中国は男の系列で、姓が同族の中で受け継がれますが、日本と違うのは、結婚をしてもお母さんはずっと名前を変えないことです。金(キム)さんと朱(シュ)さんが結婚しても、朱さんは金さんになりません。 選コム:日本のいまの家族のかたちはいつから始まったのでしょう? 嘉田氏:明治時代、国家が国民を管理するために戸籍制度ができ、それまで武士だけだった姓が庶民にもつけられるようになりました。明治国家は、天皇を頂点にする権威主義的なピラミッド社会を作りたかったんですね。 明治民法は出生者を管理する「戸籍制度」とセットで、家の成員管理をします。ここでは家の名誉である家名、系譜である家系、先祖司祭の墓守、経営である家業が組み合わさって、先祖から子孫までを縛る家族制度になりました。 この制度のもと、男が家長として命令して、筋道を作る。女は「子どもを産む道具・手段」にして、子どもが産まれないと追い出される。とにかく家を繋ぐために必死になります。 男を大事にし、その男が生まれなかったり死んでしまったら娘に婿を取らせて跡継ぎを確保する。娘もいなければ夫婦養子で、家系を繋ぐというのが明治以降の日本人の至上命題になりました。 それは天皇制で天皇を繋ぐこととセットになって、明治民法の中に組み込まれたんです。天皇家がまさに家制度の原点であり、天皇制度と明治の家制度は権威主義的に深く関わってきました。 選コム:いまの日本の家制度の問題はどこでしょう?…