社会

万博で生まれた北急、ついに延伸 半世紀の時をへて「第2の創業」

 北大阪急行電鉄(北急)が23日、千里中央駅から大阪府箕面市方面に延伸する。箕面市内に「箕面船場阪大前」と「箕面萱野」の二つの新駅が設置される。来春開幕の大阪・関西万博を前に、北急幹部が「第2の創業」と言うほど大きな節目となり、期待と課題が交錯する。 北急の成り立ちもまた、半世紀以上前にあった万博がきっかけだった。 中国自動車道上り線にある中国吹田インターチェンジの出口。多くの車が通過する料金所の辺りには54年前、駅があった。 北急の万国博中央口駅。1970年に開催された大阪万博の会場の表玄関として使われた。鉄骨鉄筋コンクリート造り2階建ての駅の名残は見えない。70年万博で臨時の「会場線」と「万国博中央口駅」 北急の「50年史」などによると、万博の入場者が当初3千万人と予測され、輸送が「最大の課題」となった。会場に直接乗り入れる鉄路が必要になり、北急が設立された。 江坂―千里中央の南北線(約5・9キロ)と、千里中央駅手前から分岐して万博会場に乗り入れる臨時線「会場線」(約3・6キロ)が建設された。営業開始は、万博開幕のおよそ3週間前、70年2月24日。 3月15日から始まった万博は、半年の期間中で、当初予測の2倍を超える約6422万人が訪れた。万国博中央口駅で乗り降りしたのは約4148万人にも上った。 期間中、車掌として勤務した藤田輝幸さん(73)は、車内がすし詰め状態で、ドアを閉めるのに苦労したことを覚えている。多い時で週3、4日、駅で案内係も担った。当時の様子を「ホームにまだ人が多く残っているのに、次から次に電車が入ってきた」と振り返る。 「50年史」などによると、万博があった70年度に約4億4千万円の黒字を出し、累積赤字1億円余りを一掃できた。 だが、南北線と会場線の建設費は計約121億6千万円と巨額。借入金の利子の負担などが「収益向上の圧迫要因」となり、赤字に陥った。不動産事業を手がけるなどした一方、沿線地域の開発も進んで利用客が増え、苦難の時代を乗り越えた。 北急は万博会場へ人々を運ぶことに加え、「豊中市と吹田市にまたがる千里ニュータウンと大阪都心を結ぶ輸送の一翼を担う」という、もう一つの大きな目的があった。 北急は大阪メトロ御堂筋線に直接乗り入れている。今回の延伸で、利用者は箕面市から新大阪、梅田、なんばなど都心に乗り換えなしで行けるようになる。北急総務部の佐伯博史調査役は「北急にとって第2の創業。その場面に立ち会えることは感慨深い」と話す。 延伸構想が初めて登場したのは、箕面市が1968年に策定した市総合計画だった。大阪都心のベッドタウンとして発展を目指す市にとって不可欠の要件として、延伸を挙げた。 財源などが課題だったが、北急と市、府などが2014年、費用負担の割合など事業化に向け基本合意。北急は「鉄道空白地帯の解消や、新御堂筋(国道423号)の混雑緩和などに延伸が必要」(延伸事業部の木村哲也調査役)などとして、市とともに16年度から工事を始めた。 70年万博と違い、北急は今回、万博会場への輸送は直接担わないが、万博を訪れる人たちが観光名所の箕面大滝なども巡るため、北急に乗って箕面市にやって来ることに期待を寄せる。延伸実現の一方で課題も 一方で課題もある。 総事業費は874億円。このうち110億円を北急が負担する。直近の年間総収入の約2倍にあたる規模だ。基本運賃に上乗せする「加算運賃」などで負担を回収する予定で、完了のめどは延伸からおおむね30年以内としている。木村調査役は「経営への影響を精査しつつ、お客様の運賃負担が大きくなり過ぎないように、負担額を設定した」と説明する。 だが設定当初に想定していなかったことが起きた。 新型コロナウイルスの感染拡大だ。輸送人員は、コロナ前の2018年度は約5938万人だったが、コロナ禍の21年度は約4510万人と、約4分の1も減った。22年度も約4955万人にとどまった。 それでも、これまでのIT活用による経費削減などを考慮して「回収」の目標時期は変えず、延伸区間に乗った場合、普通運賃に上乗せする加算運賃を60円に設定した。 一方で昨年、二つの新駅の乗降予測を、当初の1日あたり計4万5千人から、計4万1千人と1割近く減らした。 鉄道事業部の山内真紀業務課長は「在宅勤務など働き方が変わる中、コロナ前までの数字に戻る想定はせずに、施策を打っていかないといけない」。その中で利用者をいかに増やすかが課題で、箕面大滝などをデザインしたラッピング列車を走らせるなど、箕面市のPRにも力を入れている。山内業務課長は「観光資源が多い箕面市の魅力を、市などと一緒に発信していきたい」と語っている。(瀬戸口和秀)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

都市ガス受注調整、中部電力に残る問題 当時の役員が黙認した疑い

 東邦ガスと中部電力が、都市ガスの値下げ競争を不当に避ける違法行為をしたと認定された。中部電では当時の役員が黙認した疑いも残り、問題は尾を引いている。 「関係するお客さまにご迷惑をおかけしている。おわび申しあげたい」。東邦ガスの増田信之社長は今月4日に緊急会見を開き、頭を下げた。 問題となったのは、地盤とする東海地区での中部電力との都市ガスの販売競争だ。企業や自治体といった大口の顧客をどちらが受注するか、事前に話しあって決めていたとされ、国の公正取引委員会がこの日に独占禁止法違反(不当な取引制限)だと認定。料金などの競争を避けるために、遅くとも2016年11月以降に始まったと指摘された。 東レ愛知工場、ホンダ鈴鹿製…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

勾留中にがん悪化で死亡、国の責任認めず 大川原化工機事件

 起訴を取り消された「大川原化工機」(横浜市)をめぐる事件で逮捕・起訴された同社顧問の相嶋静夫さん(当時72)が亡くなったのは、勾留先の東京拘置所の医師が適切な措置を怠ったためだとして、遺族3人が、国に1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。男沢聡子裁判長は、国の責任を認めず、遺族らの請求を棄却した。 警視庁公安部は2020年3月、同社の「噴霧乾燥機」は軍事転用が可能で、輸出規制の対象だったにもかかわらず、無許可で輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反容疑で社長や相嶋さんら3人を逮捕。東京地検は同月に起訴した。 相嶋さんは東京拘置所に勾留されていた同年10月に胃がんが発覚した。勾留は停止され、翌11月に外部の病院に入院したが、21年2月に亡くなった。地検は同年7月に社長らの起訴を取り消した。国「治療で延命できたが不明」 相嶋さんの遺族側は訴訟で…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

かつてはカルフールあった街の「夢物語」 北急延伸で箕面萱野駅開業

 大阪府箕面市の大型ショッピングモール「みのおキューズモール」。建物6棟を2階のデッキが結び、開放的な雰囲気を漂わせる。モチーフにしたのは南欧の別荘という。 平日の7日。昼下がりに訪れると、ベビーカーを押す保護者や若者たちでにぎわっていた。敷地内には小川が流れ、川沿いの桜にはつぼみが膨らんでいる。 2003年10月、前身の「箕面マーケットパーク ヴィソラ」は開業した。北摂の大動脈である新御堂筋(国道423号)と国道171号が交差する北側に、市は新都心をつくる計画を立てた。区画整理をし、「かやの中央」をまち開きした。その中心施設として誘致したのがヴィソラだった。 核テナントはフランスの大手スーパー「カルフール」。ローラースケートをはいた店員や、店内で調理した本場のローストチキンが話題だった。 カルフールは撤退し、施設の名前も一新した。20年がたった今、さらに大きく変わろうとしている。23日に北大阪急行電鉄(北急)が延伸し、目の前に「箕面萱野(かやの)駅」ができる。「夢物語」とまで言われた延伸を実現させたものは何だったのでしょうか。そして、みのおキューズモールも大きく生まれ変わろうとしています。 延伸は、箕面市にとって悲願だった。 市は西部から発展し、時代と…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「人間の心はあるのか」夫は泣いた 大川原化工機、拘置所の医療問う

 起訴を取り消された「大川原化工機」(横浜市)をめぐる事件で逮捕・起訴された同社顧問の相嶋静夫さん(当時72)が亡くなったのは、勾留先の東京拘置所の医師が適切な措置を怠ったためだとして、遺族3人が国に1千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、東京地裁である。遺族は裁判所に「謝って欲しい」と訴える。 「裁判官や警察、検察は、人間の心があるのか」「死にたくない」 2020年10月。相嶋さんは東京都文京区の病院前の路上に立ったまま、周囲を気にせず、肩をふるわせて泣いた。強気で少し短気な技術者。相嶋さんの妻(75)は「事件の前までは弱音を吐くような人ではなかった」と言う。 相嶋さんが逮捕されたのは20年3月。東京拘置所に勾留されていた20年9月、貧血を発症し、黒い便が出た。外部の病院を受診したいと保釈を求めたが、認められなかった。拘置所で内視鏡検査を受け、10月に悪性腫瘍(しゅよう)とわかった。 外部の病院での精密検査や治療が必要だと再三訴えたが、認められたのは8時間の勾留停止だけだった。文京区の病院で診察を受け、「進行胃がんの疑い。精密検査が必要」との診断が出たが、その直後に行った5回目の保釈請求も、裁判所はまた認めなかった。 相嶋さんの妻は「このまま連れて逃げてしまおうかとさえ思いました」と振り返る。「適切な医療を受けさせてほしいとお願いしているだけなのに、どうしてできないのか」と思ったという。「被告」のまま死亡 長男「死ぬのを待っていたのか」 相嶋さんは翌11月に勾留執…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

ダイハツ製にあらずんば… 公用車のEV化、工場地元の町議会がNO

 ダイハツ工業の京都工場がある京都府大山崎町が、新年度の一般会計当初予算案に公用車として電気自動車(EV)を購入する費用を計上したところ、議会がこれを削除した減額修正案を可決した。「買うなら地元企業のものを」というのが理由だが、そもそもダイハツ製のEVは存在していない。 町は環境に優しい公用車として、EV1台を約280万円で買おうとした。日産製の予定だったが、議会では「日産は地元企業ではない。どうせ買うなら、町に工場のあるダイハツ製を」との意見がついて削除された。 しかし、ダイハツはEVを生産していない。スズキやトヨタと共同開発中のEVの軽商用車も、ダイハツによる認証試験不正のあおりで、23年度内の予定だった生産開始が延期されている。 大山崎町は町長、議長、教育長用として、それぞれ1台ずつ計3台の公用車を所有しており、いずれもダイハツを傘下におくトヨタ製だ。町長用の車にETC車載器を取りつける費用2万7600円も「なぜ町長の車だけなのか」と削除された。 町長の前川光氏は現在2期目。2022年の町長選では共産党の支持を受け、自民、公明、国民民主が相乗りで推薦した候補を破った。予算の減額修正案は町長に批判的な議員らによる賛成多数で18日に可決された。(日比野容子)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「仕事気になり眠れない」「毎晩じんましん」新人教員に組合が調査

日比野容子2024年3月21日 10時15分 「仕事が気にかかり眠れない」「鬱(うつ)ではないかと言われた」――。京都教職員組合が実施したアンケートで、昨年4月に採用された新人教員の気になる実態が浮かび上がった。背景には教育現場の慢性的な人手不足があるとして、労働環境の改善を求めていく。 アンケートは昨年10月~今年3月、府内の公立小中高・特別支援学校に勤務する昨春採用の教職員712人を対象に実施。121人から回答を得た。 「休日出勤(土日、祝日)はよくありますか?」という問いに対して、「ある」と回答したのは33・1%で、3年連続で前年を下回った一方、1日の時間外労働時間が「3時間以上4時間未満」「4時間以上」と回答した人が合わせて67%に上った。休日出勤は減ったものの、平日の長時間労働が依然として減らない実態が浮かび上がった。 自由回答で健康状態について尋ねると、「朝スッと起きられない。寝る時も考え事をしてしまう」「毎晩ストレス性のじんましんが出る」といった健康不安を訴える声が多数集まった。 1年目の教職員には「初任者研修」が義務づけられている。コロナ期に研修の多くがオンデマンドやオンラインに移行したが、それらを受講する時間が勤務時間内に確保されておらず、負担の軽減を求める声も目立ったという。 ほかにも「勤務時間外の打ち合わせや会議がある」「有給休暇を取らせてもらえない」などという回答があった。 京教組の中野宏之・執行委員長は「慢性的な教員不足で、新任教員を迎える先輩教員にも全く余裕がない状況だ。抜本的な解決策は教員を増やすことしかない」と指摘する。対応策を検討し、4月に府教委などに申し入れを行う。(日比野容子)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

サイバー犯罪集団ロックビットに「外部協力者」 専門家らが語る内幕

 国際的なサイバー犯罪集団「ロックビット」が2月、日本や欧米の国際共同捜査で摘発された。対峙(たいじ)し続けてきたセキュリティーの専門家らが今回、摘発を機に集団の内幕を明らかにした。攻撃を「ビジネス」と表現し、外部協力者の存在を明かしたという。 サイバーセキュリティー企業に勤める20代の日本人男性は、有志の専門家が集まる国際的なボランティア組織に属する。この組織はロックビットに、病院や非営利団体への攻撃をやめるよう働きかけてきた。 日本では、徳島県つるぎ町立半田病院がロックビットの攻撃を受けた。攻撃の約3カ月後の2022年1月、男性がロックビットの運営メンバーに連絡すると、返信があった。「アフィリエイト」と呼ばれる報酬目当ての外部協力者がおり、勝手に病院を攻撃していたと書かれていたという。 ロックビットは22年12月、カナダにある世界有数の小児科病院を攻撃した。この時、日本人男性が所属するセキュリティーの専門家集団「vx―underground(VXUG)」がロックビットに連絡すると、攻撃の数日後に謝罪し、無償で復元プログラムを提供すると声明を出したという。 米セキュリティー企業の調査では、23年だけで67の医療機関が被害にあった。VXUGは、ロックビットの主要メンバーが組織を管理できておらず、アフィリエイトは野放し状態になっているとみている。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

来場1日26人…でも維持費は年7700万円 博物館の運営を問題視

 兵庫県の2022年度事業について外部の専門家がチェックした「包括外部監査」の結果が、19日に公表された。古代鏡などを所蔵する県立考古博物館加西分館(加西市)について、来場者数が1日平均約26人しかいないにもかかわらず、年間7700万円の維持費をかけている点を問題視。また同博物館を含む13施設について、運営評価の指標が不適切だったと指摘した。 考古博物館加西分館は「古代鏡展示館」と銘打ち、鏡を中心とした中国古代の青銅器などを公開している。分館によると収蔵数は約500点。県立フラワーセンター内に立地している。 公表された監査によると、22年度の分館の有料観覧者数は7928人で、年間開館日数で割った1日平均は約26人。フラワーセンターの入園者数23万4300人のうち、3%程度に低迷している。主な展示物は、「隋唐鏡」 監査はその一因として、「地…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「野鳥の島」のアカコッコ館、貴重な自然守って30年 東京・三宅島

 野鳥の島として知られる伊豆諸島の三宅島(東京都三宅村)に、バードウォッチャーが集まる季節がやってきた。貴重な野鳥を守ってきた「三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館」は開館30周年を迎え、今月は国の天然記念物のアカコッコや島の自然を紹介する記念イベントを開催したほか、1年を通じて観察会なども予定されている。 都心から約180キロ。太古から噴火を繰り返してきた三宅島の南部には、約2千年前の火山活動でできた「大路(たいろ)池」がある。周りには巨樹の森が広がり、アカコッコやモスケミソサザイ、タネコマドリなどの声が響く。3月末頃にイイジマムシクイも飛来すると、周辺の小道は「日本一のさえずりの小径(こみち)」と称されるほど、にぎやかになる。 同館は池のそばにあり、野鳥の飛来状況や島の自然を知ることができる。日本野鳥の会が、野鳥の生息密度が高い豊かな自然の保護を訴えてきたことを受け、1993年に村営施設として開館。伊豆諸島と鹿児島県のトカラ列島のみで繁殖するツグミの仲間で、村の鳥でもあるアカコッコの名がつけられた。 著名な海洋生物学者で、三宅…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル