社会

女性と家と戦争について問い続ける 「反戦の詩人」小原麗子さん

 岩手県北上市の詩人・小原麗子さん(88)の自宅は、「麗(うら)ら舎」と呼ばれています。岩手の「おなご」たちが集って語らい、文章を書き、自らの「生」を取り戻す場になってきました。農村に身を置きながら、女性と家、戦争について書き続けてきた小原さん。インタビューに膨大な詩作や文章を交え、半生を振り返ります。 「世間の話のとおり、嫁の私の態度が悪かった。死ねば、痛くもないし、世間の話も耳に入らない」 1945年7月、小原さんが10歳のとき、姉は遺書を残して命を絶ちました。農村で嫁は「角のない牛」と言われ、忍従が求められた時代。過労がたたって病気になり入院中だった姉は、従軍中の夫が戦死したといううわさをきいて、命を絶ったのです。しかし、戦死は誤りで、のちに姉の夫は生還しました。 《姉を追い詰めたのは、「病気」だったのでしょうか。「世間」だったのでしょうか。「国の非常時に死んでゆくのは申し訳ない」「戦地の兄さん(夫)に申し訳ない」と姉は遺書にしたためました。国と夫。姉は、男の体制に詫(わ)びたのか》 世界では戦闘が続き、女性も兵士となっています。暴力や抑圧に苦しむ人も絶えません。戦争が人々に及ぼす影響とは。戦争とジェンダーについて考える研究者や平和活動に尽力する識者らに聞きます。 《国と夫に囚(とら)われて…この記事は有料記事です。残り2476文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんThink Gender男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

旧大河ドラマ館の活用「難しい」 徳川家ゆかりの品、展示施設検討で

大平要2024年3月9日 10時35分 徳川記念財団(徳川家広理事長)などが所有する徳川家ゆかりの美術・工芸品の収蔵・展示施設の整備を検討している浜松市は8日、現時点の検討状況を有識者委員会に報告した。1月に閉館した大河ドラマ館の跡地利用をめぐり「建物や敷地を活用した施設の整備は難しい」との見解を示し、さらに検討を続けるとした。 同財団は、東京都内などに分散して所有している約2万点をすべて浜松市内に移す意向を伝えている。国の重要文化財や刀剣類もある。 現在の旧ドラマ館の建物をそのまま活用した場合、展示室と収蔵庫に、それぞれ約300平方メートルしか確保できない。市は国の指針に加え、ほかの施設の事例を調査した結果、展示施設に800平方メートル、収蔵庫には少なくとも600平方メートルが必要で、再整備は困難だとした。 また、既存建物をすべて解体して敷地に新たに施設を建設した場合には、「広場から浜松城天守が見えない」とし、景観上の問題も生じるという。 一方、展示や収蔵に「のぞましい施設」を新たに整備する場合、概算で65億2千万円かかるとの試算も公表した。ドラマ館をすべて活用した場合の23億6千万円のおよそ3倍で、有識者委員から「実現には市民の理解が必要だ」との意見も出された。市は、基本計画の決定を今秋以降に先送りする方針も示した。(大平要)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

まるでミニイプシロン? 発射近づく民間ロケット、開発6年なぜ完成

 設立から6年の日本のベンチャー企業が、小型ロケットの打ち上げに初めて挑む。めざすのは、「宇宙宅配便」サービス。ただ、運ぶためのロケットは、開発中も含め公開されていない。いったい、どんなロケットなのだろうか。 ベンチャー企業「スペースワン」(東京都)が開発したのが、小型ロケット「カイロス」。契約から打ち上げまでの時間を短くするなどの思いから、「時」をつかさどるギリシャ神話の神の名に由来する。 3月9日午前11時1分、和歌山県串本町にある発射場から打ち上げ予定。小型衛星1機を高度約500キロの軌道に乗せることがミッションだ。 衛星は、内閣官房が運用する本物の衛星。爆発などトラブルがつきもののロケット開発において、打ち上げ経験のない会社が、初号機から荷物を運ぶのは珍しい。奈良の大仏と同じ高さ カイロスは、全長約18メートル、直径約1.4メートル、重さ約23トン。高さは奈良・東大寺の大仏(台座を含む)とほぼ同じ。重さは荷物を載せた大型トラック並みだ。 特徴は固体燃料を使う点にある。 花火のように、燃料を混ぜて固めた固体燃料ロケットは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが打ち上げたH3などの液体燃料ロケットと比べて、部品が少なくて開発が比較的容易とされる。 とは言え、スペースワンは2018年に発足したばかり。時間のかかるロケット開発は、一筋縄ではいかないのが普通だ。 JAXAの的川泰宣名誉教授(宇宙工学)は「日本が培ってきたロケット技術が積み重ねられている」とみる。固体燃料ロケット「イプシロン」を手がけるIHIエアロスペース(東京都)が参画していることが大きいという。70年続く「ロケット屋」から技術者が出向 日本の固体燃料ロケットの歴史は1955年、全長23センチのペンシルロケットに始まり、日本初の人工衛星を打ち上げたラムダ、小惑星探査機「はやぶさ」を運んだM(ミュー)5、現在のイプシロンへと進化してきた。 ペンシル以来、固体燃料ロケットを70年近く製造する企業が、IHIエアロスペース(前身を含む)だ。同社によると、技術者十数人がスペースワンに出向し、開発に従事。社内の工場でロケット部品も製造した。 「イプシロンをつくった当社の技術が応用されている」と担当者。スペースワンの豊田正和社長も「ゼロからの出発なら相当時間がかかった」と語る。 カイロスは、3回加速する3段式ロケットと、軌道投入するための小型エンジンからなる。構成はイプシロンと同じだが、カイロスの方が一回り小さい。「『ミニイプシロン』のようだ」と表現するロケット開発者もいた。 一方、「ミニ」ゆえの難しさ…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

月100万円が一瞬で… 戻れぬ能登の働き手、熊本地震より回復鈍く

 能登半島地震で被災した企業の再建が壁に直面している。生活に必要なインフラの復旧に時間がかかり、避難した働き手が戻ってこないためだ。事業の再開を断念した企業もあるという。 事業再開のメドが立たない企業が多くを占める中、再建に向けて動き出した人たちもいる。 地震から1カ月半あまり経った2月中旬。断水が一部で続く能登町にある鍛冶(かじ)屋「ふくべ鍛冶」の店先は、歩道のコンクリート片が盛り上がったままの状態だった。地震で工場の機械が倒れるなどし、数百万円規模の損害が出た。 1908(明治41)年創業の老舗。4代目の干場(ほしば)健太朗さん(43)は「観光客で成り立っていた月100万円の店舗収入が一瞬でなくなった」と話す。 ただ、10人の職人は全員無事で、生産設備にも致命的な被害はなかった。熊本地震より鈍い、融資の申し込み 干場さんは職人の生活を守るためにも、営業再開を急いだ。給与など運転資金を確保するため、1月末にはインターネットで寄付を募るクラウドファンディングを開始。職人は自身の生活再建のため1日2~3時間ずつしか働けないが、通常の半分ほどのペースで商品の製造を再開した。 干場さんが気になったのは周…この記事は有料記事です。残り895文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこどもと被災地東日本大震災が起きてからの13年という月日は、子どもが大人へと成長するほどの長さです。それぞれの土地で暮らす子どもたちの物語。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「初代門司駅」の遺構、4月移築は頓挫 修正動議が52年ぶりに可決

 北九州市議会は8日、公共施設建設予定地で見つかった「初代門司駅」の関連遺構を移築保存する費用2千万円について、一般会計補正予算案から削除する修正動議を賛成多数で可決した。修正動議の本会議での可決は52年ぶり。修正した予算案も可決され、4月以降に遺構を切り取って移築する市の方針が頓挫した。 動議はハートフル北九州が提出。提案理由について「適切な埋蔵文化財調査と厳密な記録保存を行うとともに、速やかに公共施設の計画を進めるべきだ」としており、自民党・無所属の会や公明なども賛同した。 ただ、遺構の扱いが棚上げされただけで、決着はついていない。動議に反対した会派からは「現地保存しなくていいということか」「新しい遺構が出ても工事が進むことを前提にした動議か」といった質問が出たが、提案者側から明確な回答はなかった。 賛同した会派の中でも、自民…この記事は有料記事です。残り294文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

帰れぬふるさと、届かぬ医療 ビキニ水爆実験で移住させられた島は今

 米国の核実験場だった太平洋・マーシャル諸島では、移住を強いられた島民らがいまだ故郷に帰れずにいる。ビキニ環礁での大規模な水爆実験から70年になるのを機に、移住先の島を日本の医師らが調査すると、必要な医療が届いていない実態が明らかになった。 ビキニから約800キロメートル離れたエジット島。東京ドーム一つ分程度の面積に、約300人が住む。 この島で2日、日本から訪れた医師らが健康相談を行った。ビキニ水爆実験を機に結成された団体「原水爆禁止日本協議会」(事務局・東京)の派遣団だ。持参した医療器具で、血圧や血糖値、甲状腺に異常がないか検査。必要があれば、解熱剤や胃腸薬などを渡す。 呼びかけに応じた29~72歳の計17人が受診した。多くが親や結婚相手がビキニ環礁出身だ。 牧師のロニー・ジョエルさん…この記事は有料記事です。残り904文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

巡査長が捜査費をギャンブルに使用か 愛知県警が書類送検、免職処分

 捜査の協力者などに払う捜査費を着服したなどとして、愛知県警は8日、瀬戸署警備課の巡査長の男(29)を窃盗と業務上横領の疑いで書類送検し、発表した。巡査長を同日付で懲戒免職にした。容疑を認め、「業務中に競馬や競輪などのギャンブルに使った」と供述しているという。 県警によると、巡査長は昨年7月11日、上司から受け取った捜査諸雑費5千円を横領したほか、同僚課員2人の机の引き出しから同各3千円を盗んだ疑いがある。当初は「自分も盗まれた」と話していたが、その後に一転して認めた。 被害に遭った課員からの申し出があり、発覚した。巡査長は「給料が入ったら返そうと思っていた」などと話しているという。 捜査諸雑費は捜査費の一つで、捜査員が緊急時に使えるように月初めに3千~5千円を目安に事前支給される。情報提供者への謝礼や尾行時の交通費などに充てることができる。 県警の川口孝首席監察官は「…この記事は有料記事です。残り93文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

「焦って赤ちゃんを湯船に沈めた」 23歳の女を殺人容疑で再逮捕

甲斐江里子2024年3月8日 18時15分 ホテルのゴミ箱に産んだばかりの男児の遺体を捨てたとして死体遺棄容疑で逮捕された住居不定、自称風俗業の中元桜冬(おと)容疑者(23)について、大阪府警は8日、殺人の疑いで再逮捕し、発表した。「生きていることに焦って赤ちゃんを湯船に沈めた」と供述し、容疑を認めているという。 発表によると、中元容疑者は2月18日から20日までの間、泊まっていた大阪市中央区高津2丁目のホテルの部屋で、出産したばかりの男児を浴槽内の水中に押さえつけ、殺害した疑いがある。容疑者はその後、男児の遺体を同じホテル内のゴミ箱に遺棄したとされる。(甲斐江里子)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

卒業式前に友や家族と再会 輪島中の73人が帰郷 集団避難終了で

 能登半島地震で被災した石川県輪島市の輪島中学校3年生の73人が集団避難を終え、8日、市内に戻ってきた。生徒たちには約50日ぶりの帰郷となった。 3年生は、同県白山市で集団避難をしており、9日に行われる卒業式にあわせて集団避難を終了する。 午前9時ごろにバス3台で白山市内を出発、約3時間かけて市内に到着した。式は輪島消防署の一室を借りて行われる予定で、8日は同署で式のリハーサルを行った。 生徒たちは雨の中、バスから降りると、市内に残っていた生徒たちと再会し、互いに近況を語り合っていた。(田辺拓也)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこどもと被災地東日本大震災が起きてからの13年という月日は、子どもが大人へと成長するほどの長さです。それぞれの土地で暮らす子どもたちの物語。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

クロマグロ漁で個体数も報告に 大間の不正事件受け、漁業法改正案

加藤裕則2024年3月8日 19時42分 政府は8日、太平洋でとれたクロマグロの個体数の報告を求める制度の新設などを柱とした漁業法など関連法の改正案を閣議決定した。青森県大間町で昨年、漁師らがクロマグロの漁獲量の一部を報告しなかった不正事件があり、水産庁は再発防止に向け規制を強化する。 太平洋のクロマグロは国際機関が国別の漁獲枠を重量ベースで決め、水産庁が日本に割り当てられた分を都道府県に配分している。漁業者は漁獲量を都道府県に報告し、水産庁がとりまとめて全体の漁獲量を確認している。 改正案では、重量のみだった報告内容に個体数を追加。漁船名、個体ごとの重量の記録作成や保存も義務づける。罰則も強化し、法人への罰金も新設する。「抑止力になる」と水産庁の担当者 対象は30キロ以上の大型のクロマグロを想定。今国会の成立をめざし、成立後、2年以内に施行する方針。 青森県の調査では、2021年で計88トンのクロマグロについて報告がなかったという。水産庁加工流通課の中平英典課長は「このような事態が起きると、漁獲枠の拡大に水を差すことになる。法改正ですべてを防げるわけではないが、迅速な調査や検査につながり、抑止効果がある」と話す。(加藤裕則)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル