小林製薬(大阪市)の紅麴(こうじ)成分を含むサプリメントをめぐる健康被害。同社の対応が遅れるなか、新たな死者が確認され、入院は100人超に上った。原因の特定や被害の全容把握は進んでいない。企業の責任で健康への効果を表示し販売できる「機能性表示食品」制度の問題点があらわになった。 「大変問題があったと思う」。27日の衆院厚生労働委員会で、武見敬三厚労相は、行政への報告が遅れた小林製薬の対応を批判した。 厚労委での武見厚労相の答弁によると、同社が最初に問題を把握したのは1月15日。消費者庁へ連絡したのは2カ月以上後の3月21日だった。消費者庁の指示で同社が大阪市保健所に連絡し、大阪市経由で厚労省に連絡が入ったのは同社が問題を公表した22日だった。 その後、厚労省が再三、情報提供を求めるなか、同社は行政への報告前に被害情報の更新を続け、26日には初の死者が確認されたと公表した。厚労省は死亡例があったことを報道で知ったという。 林芳正官房長官は同日の記者会見で、同社の対応について、「まことに遺憾」との表現を2度繰り返し、いらだちを見せ、報告の遅れを批判した。 こうした事態に危機感を募らせた厚労省は、急きょ同社の担当者を東京・霞が関に呼び、消費者庁と合同で聞き取りを実施。その場で、さらに別の1人の死亡や100人超が入院しているとの報告を受けた。食品衛生法が定める「有害な物質」を含む食品による健康被害が生じていると判断し、26日深夜、廃棄命令などを出すよう大阪市に通知。日付の変わった27日未明に報道各社に通知内容を説明する異例の対応となった。被害の拡大を防ぐため、国が「直接介入できるようにした」(武見厚労相)。同日午後には、関係省庁による連絡会議を開き、今後の対応を協議した。 通知を受け、大阪市は27日、同社に対し3製品の回収を命じた。市の担当者は27日の会見で、報道陣からより早い情報共有があれば助言ができたのではと問われると「その通りだと思う」と認めた。吉村洋文府知事も同日の会見で、「健康被害が確認されてから2カ月経過しているので速やかに行政と相談すべきだったと思う」と話した。市幹部は「原因究明ができておらず、小林製薬側でも回収を進めているなかでこちらで命令を出すべきか判断がつかなかった」と漏らした。 首相官邸内には危機感が広がりつつある。自民党派閥の裏金問題を受けて、内閣支持率が過去最低水準に落ち込む中、この問題で対応を誤れば政権へのさらなる打撃となりかねない。官邸幹部は「これだけ広範囲に販売されている食品での被害は過去にない」と語り、厚労省の担当者に早急な対応を求めて直接指示を出したという。(後藤一也、笹川翔平、原田達矢) 小林製薬に腎疾患の入院患者を診察した医師から「サプリに、腎疾患を引き起こす成分が含まれているのではないか」との連絡が届いたのは、1月15日だった。 2月初旬にかけて、さらに数例の入院が同社に報告された。だが、問題を発表したのは、3月22日だった。小林章浩社長は同日の会見で「事実確認や原因究明に、結果として時間がかかってしまった」と釈明した。 識者「流通止める判断遅い」 医師らが当初指摘したのは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ヒットした「コレステヘルプ」 機能性表示食品の泣きどころが表に
消費者庁は26日、「安全性に大きな疑念を抱かせる深刻な事案」として、6800の機能性表示食品すべての緊急点検を指示した。機能性表示食品の問題点とは何か。 「濃縮物を毎日摂取するという健康食品のリスクが端的にあらわれた事件」と、食品安全に詳しい科学ジャーナリストの松永和紀さんは話す。食事では、食べるものの種類や量などが日々変わるのが普通。だが、成分を濃縮して作るカプセルや錠剤などのサプリメントの場合、容易に大量の成分を摂取でき、毎日飲み続ける分、健康へのリスクも大きくなり得る。 さらに「紅麹コレステヘルプ」は、機能性表示食品として「悪玉コレステロールを下げる」などとうたっていた。機能性表示食品は、健康に与える効果(機能性)や製品の安全性の根拠を消費者庁に届け出さえすれば機能性の表示ができる制度。表示の文言も企業が比較的自由に設定でき、消費者に大きな訴求力を持つ。コレステヘルプも2021年の発売以来、約106万袋を販売。「生活習慣病関連の商品としてはヒット」(業界関係者)だったという。 機能性表示食品制度の導入検討時、消費者庁「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」の委員だった合田幸広さんは、医薬品との品質管理のレベルの違いを指摘する。医薬品の製造では、治験で使用し承認を得たものと、同一の作り方で、有効成分以外の含有物質も同等のものを作り続けるよう厳しく定められている。 医薬品的な効果を期待させるが、製造工程は… しかし今回のサプリは機能性表… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
JR西も150億円を出すローカル線 国が創設した新たな枠組みとは
岡山、広島両県を走るJR芸備線の一部再編方針を議論する「再構築協議会」が26日に始まった。昨年改正された地域交通法で創設された制度で、開催は全国で初めてだ。 改正法では再構築協議会のほかに、鉄道やバスといった公共交通も「地域のインフラ」と位置づけ、国が交付金を出す新制度もできた。地域の公共交通機関のあり方についての計画を出してもらうことが条件で、手遅れになる前に自治体も含めた話し合いを促すのが狙い。 それまでは、赤字の鉄道会社のみが経営改善のために受けられる仕組みだったが、黒字会社でも、赤字路線の利便性を高めるために使えるようになった。 第1号となったのは、富山県を走るJR城端線・氷見線。JR西日本と富山県などが昨年9月、第三セクター「あいの風とやま鉄道」に移管する方針で合意した。 計画では、新型車両の導入やレールの更新、駅の改良などにかかる341億円の3分の1を国の交付金でまかなう。周辺自治体だけでなく、JR西も約150億円を出す。2033年までの10年間で、1日の利用者数を2400人増やす青写真を描く。 この枠組みを使えるように… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「投資詐欺に遭い苦しく」風俗店で副業、女性教諭を停職処分 都教委
風俗店で副業をしたとして、東京都教育委員会は27日、多摩地域の小学校の女性教諭(41)を停職6カ月の懲戒処分とし、発表した。 都教委によると、女性教諭は昨年4~11月ごろ、勤務後や休日に週2回、複数の風俗店に勤務していた。仮想通貨の投資詐欺に遭い経済的に苦しく、「家族を養うためにやむを得なかった。児童、保護者の信頼を裏切り、心より反省している」と説明しているという。27日付で、辞職が承認された。 このほか、男子生徒に馬乗りになって床に押さえつけるなどの体罰をしたとして多摩地域の都立高の男性主任教諭(63)が停職1カ月。指導として男子生徒を椅子の背もたれに布テープでまき付けるなどしたとして23区内の中学校の男性教諭(64)は減給10分の1(1カ月)とされた。 また、別人になりすまし、知人の男性教員からセクハラ行為を受けたと虚偽の告発を都にした多摩地域の都立高の男性主幹教諭(48)が減給10分の1(3カ月)とされた。書類送検され、昨年11月に不起訴処分(起訴猶予)となった。(本多由佳) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
赤木さん妻側、財務相や元検事の尋問請求 森友文書不開示巡る控訴審
学校法人森友学園の国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを強いられ、自死した近畿財務局職員の赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(53)が、改ざんに絡む行政文書を存否も明かさずに不開示としたのは不当として、国に取り消しを求めた訴訟の控訴審第2回口頭弁論が27日、大阪高裁であった。雅子さん側は「不開示決定の経緯を聞く必要がある」として、鈴木俊一財務相と当時の同局局長の尋問を請求した。 雅子さんは2021年8月、同省や同局が大阪地検に任意提出した文書などの開示を求めたが、捜査への支障を理由に不開示とされた。財務相らの尋問は一審・大阪地裁でも求めたが認められず、昨年9月の地裁判決は、検察の捜査手法などが推測されると「同種事件で罪証隠滅が容易になる可能性がある」などと指摘し、不開示決定は妥当と結論づけた。 雅子さん側はこの日の弁論で、元東京地検検事の郷原信郎弁護士の尋問も請求。文書の内容が公になったとしても、同種事件の捜査に支障は生じないことを明らかにしたいとした。また、俊夫さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」や、同局の決裁文書などが地検に提出されたことは周知の事実だとし、「存否の回答を拒否することは許されない」と改めて主張した。(山本逸生) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
トー横に来る子、「その前に相談を」 ゆうちゃみさんらが啓発活動
春休みに東京都新宿区歌舞伎町の「トー横」へ来た子どもが犯罪に巻き込まれないようにしようと、東京都と警視庁などは27日、タレントの「ゆうちゃみ」さんをトー横へ招いて啓発活動をした。 ゆうちゃみさんは大学生ボランティア十数人と一緒に、行政の相談先電話番号が書かれたウェットティッシュなどを配り、「トー横へ来る前に相談を。私も協力したい」と話した。 相談先の一つヤング・テレホン・コーナー(03・3580・4970)では20歳未満からの相談を受け付けている。 都によると、今年1月に臨時開設した別の相談窓口には、12日間で延べ約300人が訪れた。4月以降、トー横の近くに常設の相談窓口を新たに作る予定という。(御船紗子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「あまちゃん」出演、村杉被告に有罪判決 麻薬特例法違反などの罪
違法と認識しながら密売人から規制薬物を譲り受けたとして、麻薬特例法違反(規制薬物の譲り受け)などの罪に問われた俳優の村杉蝉之介(せみのすけ)(本名・村杉友一)被告(58)に対し、福島地裁は27日、懲役10カ月執行猶予3年(求刑懲役10カ月)の有罪判決を言い渡した。 三浦隆昭裁判長は「リラックスしたいなど安易な理由から犯行に及んだ」と述べた一方、心療内科医への通院をはじめ再犯防止に努めているなどとし、執行猶予が付いた判決が妥当とした。 判決によると、被告は2022年11月~23年1月ごろ、大麻など規制薬物を4回にわたって譲り受け、23年11月には自宅で大麻リキッドなど計約3・32グラムを医薬品医療機器法の指定薬物と誤認するなどして所持した。 今月12日の初公判では起訴内容を認め、「他人と接するとストレスを感じる。薬物を使うと気持ちが落ち着く」と説明。「役者に戻ろうとは考えていない」と話した。 被告は劇団「大人計画」に所属し、NHKの連続小説「あまちゃん」や大河ドラマ「どうする家康」などに出演したほか、ロックバンド「グループ魂」のメンバーとして紅白歌合戦にも出演した。(滝口信之) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ミスさんさ」応募条件に年齢制限や独身、家族の承諾も 改善を要望
岩手県を代表する夏祭り「盛岡さんさ踊り」のPRを担う「ミスさんさ踊り」。その募集要項で、性別や年齢などに制限があるのはジェンダー平等ではないとして、市民団体が26日、内舘茂・盛岡市長宛てに改善を求める要望書を出した。 ミスさんさは毎年5人選ばれ、パレードの先頭で踊るほか、年間を通じて県内外で宣伝に従事する。その募集要項には、盛岡市内か近隣に住む18歳から28歳までの独身女性(高校生不可)で、家族や所属先(職場・学校など)から承諾書が得られることなどが条件とある。ミスさんさと共に祭りを盛り上げる、ミス太鼓やミス横笛、うたっこ娘にも年齢制限や独身の条件がある。 「さんさへの情熱がある人全てが応募できるようにしてほしい」。そう語るのは、市民団体「かだって!さんさをひろげるプロジェクト」代表の佐藤真子さん(26)。「成人女性が活動するのになぜ許諾が必要なのか。承諾書についても再考すべきでは」とも問題提起する。 佐藤さんが代表を務める別の市民団体は、昨年の盛岡市長選や市議選で、候補者にジェンダー平等についてアンケートを実施。ミスさんさのあり方も質問をしたところ市民から反響があったという。その後、関心のある市民ら14人が集まり話し合い、市に要望書を提出することになった。 メンバーの一人で、盛岡市の玉木春香さん(27)は、「小学生の頃からさんさ踊りに参加し、ミスさんさに憧れた時期もあった。でも25歳で結婚して、自分が対象外になったと知り、悲しかった」。1997年にミスさんさを務めて、妹や2人の娘もミスさんさだった盛岡市の小川佐和さん(49)は、「より多様な人たちで、さんさ踊りを盛り上げられるよう見直す時期だと思う」と話す。 近年、祭りや観光のPRを担う人材を募集する際、性別や年齢の制限を撤廃する動きが広がる。愛知県一宮市の一宮七夕まつりでは2022年度に「ミス七夕・ミス織物」が廃止され、学生サポーターが導入された。山形市の「山形花笠まつり」では、今年から女性に限定せずに「ミス花笠」を公募する。 要望書を提出した一人で、ジェンダー問題に詳しい岩手大准教授の古橋綾(あや)さん(39)は「ミス制度を見直すことは、盛岡が多様な人にとってより魅力的に変わるという意思表示になる」と語る。 ミスさんさは、市長が会長を務める「盛岡さんさ踊り実行委員会」が募集・審査する。要望書を受け取った内舘市長は、「すでに委員会の協議の場で、応募資格を見直す必要を提案した」と明かしたうえで、「さんさの歴史を支えてきてくれた皆さんと丁寧に話し合いをして、来年に向けて見直したい」と語った。(伊藤恵里奈) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
フェルメール絵画のじゅうたんが日本に? その歴史と驚きの鑑定結果
「お宝」は破格の値段で売りに出されていた。手織りじゅうたんのオンラインショップを営む藪下晶子さん(48)は、オークションサイトに出品されていた古いじゅうたん2枚に目を奪われた。2022年の夏のことだ。 色使いや粗い織り方に見覚えがあり、貴重なものだと直感した。信じられないような値段で売り出されており、まさかと思いながらもすぐその2枚を購入した。 じゅうたんが届き、実物を見ながら改めて資料を調べた。この分野に詳しい知人の意見なども聞きながら、およそ300年前のじゅうたんという確信を得た。それだけでも貴重だが、片方のデザインをよく見ているうちにさらに気付きがあった。 オランダの画家フェルメールの有名な絵画「水差しを持つ女」に描かれているじゅうたんとほとんど細部にわたって同じ図柄なのだ。 葉っぱの位置やサイズ感、細い額縁のような部分のデザインも、織りが粗くてつぶつぶした感じもよく似ている。絵は1662年に描かれているが、時代的にそう離れてはいるわけでもない。 「フェルメールの絵とそっくりのじゅうたん……そんなことってある?」 祇園祭の山鉾に飾られるじゅうたんも じゅうたん2枚はデザインや… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
愛子さま「斎王は恋愛タブー?」 尋ねられた職員の答えは
天皇・皇后両陛下の長女愛子さまは27日午前、滞在先の三重県明和町で斎宮歴史博物館といつきのみや歴史体験館を視察した。単独での地方訪問や参拝は初めて。 斎宮は飛鳥時代から南北朝時代にかけて、伊勢神宮に仕えた未婚の女性皇族「斎王」が暮らした宮殿と役所。同博物館は斎宮の発掘現場の上に建てられており、「伊勢物語」や「源氏物語」などの古典文学に描かれた斎王についての史料や展示がある。 博物館の入り口で、出迎えの地元の小学生らに歩み寄ると、子どもから「卒業したんやろ、大学」などと声がかかった。愛子さまは「小学校は楽しい?」と笑顔で応じていた。 伊勢物語の中の著名な一幕「狩の使」の絵巻の前で、職員から「斎王のラブロマンス」などと説明を受けた際には、「(恋愛は)斎王はタブーですか?」などと質問。職員が「未婚の女性ですので、タブーです」と答えると、「(絵巻に)描かれているのは面白いですね」と話した。 また、中世を代表する女性歌… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル