豚コレラのワクチン接種が24日にも推奨地域で始まる。ワクチン接種県の福井県は、小規模ながら県ぐるみで豚の飼育を支援してきたが、豚コレラの影響で残る養豚農家がわずか3戸になった。県養豚産業が存亡の危機にある中、切望していたワクチン接種。県や関係者、農家らは「福井から養豚業を絶やしてはならない」と、今後の経営継続を模索する。
県ぐるみで 防疫対策
越前市で母豚60頭の一貫経営をしていた相馬秀夫さん(64)は、石灰で真っ白になった畜舎を見回り、寂しそうな表情を浮かべた。20歳で就農し、父の経営を継いで豚専業で生きてきた。40年以上、毎日畜舎で豚の世話をし続け、娘の結婚式ですら宿泊はせず日帰りにした。豚と共に歩んできた人生だ。
しかし、8月に感染が発覚し、全688頭を殺処分。相馬さんはガランとなった畜舎で「豚コレラでいきなり強制終了となってしまった。経験したことのないむなしさ、悲しみ、寂しさが心を覆っている」と明かす。
これまで同世代の農家らと毎月のように集まり豚で地域を活性化しようと議論してきた。畜産試験場や県、行政、JA、精肉店や食肉処理場の担当者と顔の見える関係を築き、10年以上も県養豚協会の会長を務めた。
岐阜県で豚コレラがまん延すると、福井県や市の担当者は農家に出向いて柵の施工を手伝うなど、豚コレラを防ごうと頑張ってきた。相馬さん自身も今年、豚の飲み水のタンクを更新した他、石灰まみれになるほど対策をし、妻と共に消毒・着替えも入念にしてきた。
しかし、7月上旬に県内で感染イノシシが見つかり、下旬には市内で相馬さんの畜舎から3キロ離れた養豚場で感染が発覚した。養豚場の主は若手農家の夫妻。苦労して経営する姿を知っていただけに、つらかった。
相馬さんの畜舎は、盆時期の8月12日に感染が発覚。信じられない思いだった。真夜中に何百という人が小さな養豚場に集まり豚を殺処分した。その異様な風景に「近所の人や古里に帰ってきた若者にとってどれほどの衝撃だっただろうか。豚にも関係者にも、地域の人にも本当に申し訳ないことをしてしまった」と相馬さんは話す。近所の人や行政職員らは迷惑を掛けたにも関わらず、温かい心配の言葉を掛けてくれ、心が痛んだ。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース