「笑顔の絶えん家庭をつくろうな」
結婚前に口にした言葉。それを責められるなんて、思いもしなかった。
2000年1月、京都市中心街のライブハウス。男性(55)が演奏を終えたとき、客として来ていた妻(47)と出会った。
ビール片手に打ち解けた。お互いに一目ぼれのような恋の始まりだった。
02年6月に結婚。関西地方の郊外の一戸建てに移り住んだ。
しかし、結婚生活は予想外のことばかりだった。
交際中に男性が就職した運送会社は、異常な長時間労働が当たり前だった。午前5時に家を出て、深夜に帰る。家ではほとんど寝て過ごした。
妻は家で一人きり。でも、男性は「仕事についていくのに必死。妻のことを思いやる余裕などなかった」と振り返る。
どんなに帰りが遅くても、妻は結婚前の約束を守り、豪勢なおかず6品を並べて待っていた。男性は「そこまでしなくとも」と恐縮したが、彼女はかたくなだった。
幸せになるために、人生をともに歩むと決めたはず。でも、パートナーとの毎日が思い描いたものにならない人もいます。苦しみの原因は、改善策は。たくさんの「ふたりのかたち」を通して考えます。
半年ほどたつと、妻は違う顔を見せるようになった。
ある夜、突然、「もうご飯つくれへん」と泣き出した。男性は「そんなすごいもん、つくらんでええから」と慰めた。
子どもの前でも殴り合った
帰宅すると、妻が酔っていることが多くなった。食べたものを風呂場で嘔吐(おうと)することも目立った。当時はまだ診断は受けていなかったが、学生時代から摂食障害とアルコール依存症を抱えてきたと知った。
しだいに妻は深酔いを隠さな…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル