▽多言語発信 行政は工夫を
「キンキュウジタイセンゲンって何、と最初は思った」―。英会話講師などとして働きながら広島県内に住む海外出身者が、新型コロナウイルス関連の地域情報をタイムリーに把握できず、不安を感じているという。県内にはさまざまな国から来た人が住む。日本語が読めない人もいる。現状を調べた。
「会員制交流サイト(SNS)で『キュウギョウヨウセイ』を知った」。広島市内で英会話教室を開いているオーストラリア出身のミシェル・クロザーズさん=中区=は、県が政府の「緊急事態宣言」に基づいて対象施設に休業要請をした4月18日、友人の英語の書き込みを読んだ。自分の教室は対象なのか。今後どうすべきか。国や県の情報をネット上で探したが、たどり着けなかった。念のため当面の休業を決めた。
県のホームページ(HP)は、県内の感染者数や相談窓口などの情報を9言語で掲載。ただ、HP内のどこにあるのか非常に分かりにくい。また、自動翻訳機能を使っているため「訳文が正しくない場合がある」とただし書きがある。
県ブランド・コミュニケーション戦略チームによると、県公式ライン(LINE)やツイッターでも平易な日本語で情報を流している。しかしクロザーズさんは知らなかったという。日本語だと周知に限界がありそうだ。広島市のHPも、自動翻訳機能により英語や中国語で読めるが、知名度は十分でないようだ。
「英語で情報を」との切実な声に応え、手弁当で奮闘している人に話を聞いた。英国出身で観光のインバウンド事業に携わるポール・ウォルシュさん(51)=東区=は県や市の発表資料、中国新聞の記事内容などを、自身が運営するHP「GetHiroshima(ゲット・ヒロシマ)」やツイッターに英語で投稿している。「多様な情報を可能な限りリアルタイムで届ける」よう心掛けている。
広島在住約20年のウォルシュさんは「2018年の西日本豪雨でも似た状況だった」と話す。避難勧告の意味や、被災者支援の内容を発信した。今回も、休業要請に全面的に応じた個人事業主らに県が支給する協力金や、感染状況などの情報をボランティアで英訳し、連日流している。
クロザーズさんは、5日の県対策本部の会議内容をウォルシュさんの投稿で確認した上で、教室の再開時期を判断するという。
法務省によると県内の在留外国人は約5万4千人。家族構成や職業など事情は一人一人違う。「行政の努力だけでは限界があるかもしれないが、私たち当事者と連携すれば、より迅速で多様なニーズに対応した多言語発信ができるはず」とウォルシュさん。「行政が命と暮らしに関わる情報を外国人にも懸命に届けようとしている、と分かれば誰もが安心して暮らせる」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース