5年2組にはトシくんという知的障害のある男の子がいた。彼をめぐって開かれた1985年9月の学級会のことを、担任だった久保敬は忘れることができない。
この小学校では、障害のある子も原則として一般学級で学ぶ「原学級保障」という考え方をとっていた。トシくんも担当教員のサポートを受けながら、みんなと一緒に学んでいた。
言葉で思いを伝えることがほとんどできなかったトシくん。朝は近所の子と集団登校していたが、下校時は毎日の「終わりの会」でトシくんと一緒に帰る子を募っていた。
ところが1学期も終盤になると、一緒に帰るメンバーが3人の女子に固定されてしまった。それを問題視した久保が開いたのが、その学級会だった。
タケルが「トシくんとまだ一度も帰ったことのない人がたくさんいる。当番制でトシくんを送ろう」と提案すると、女の子の一人が「私、習い事があるから無理や」と反対した。
すると、今度はその子に非難が集まった。
「トシくんのこと考えてへんのちゃうか」
「毎日都合が悪いなんてことはないやろ」
やがて、当番制で話がまとまりかけた。久保も内心で、その方が負担が公平でよいだろうと思っていた。
そのときだった。
「上から目線」の優しさ
毎日トシくんと一緒に帰って…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル