家庭や学校に居場所のない少年少女のたまり場が、各地にある。東京・歌舞伎町の新宿東宝ビル横は「トー横」、大阪・ミナミのグリコの看板下は「グリ下」。名古屋・栄はドン・キホーテ栄本店の横に「ドン横」という一角がある。そこに集まる子どもたちはドン横キッズと呼ばれる。必ずしも非行少年ではないが、知識や経験の乏しさもあって犯罪に巻き込まれやすい「もろさ」を抱える。
10月の平日午後8時ごろ、栄駅近くの「オアシス21」。バスや電車で家路を急ぐ人々がいるなか、広場の隅に少女3人が座っていた。年齢は16歳。「うちらはドン横(キッズ)と違う」と口をそろえた。
1人が身の上を話してくれた。前週に家出してオアシス21付近にたまるようになった。通っている高校は生活指導が厳しい。「もうやりませんって誓約書みたいなのを書かされた。それでも言うこと聞かなかったから居づらくなった」
警察や行政に向けたまなざし
家庭について聞くと、「厳しいんだよね」と漏らし、「お母さんは怒る頻度は多いけど手を出してくるのは時々。お父さんは怒る度に殴ってくる」と打ち明けた。そして、スマートフォンの写真を示してきた。「この前は扇風機も投げられた」。左のこめかみや手の甲に内出血ができた跡が写っていた。いまは、同い年か2歳ぐらい上の男性宅を転々としているという。
この夏、警察や行政が中区役所内に悩みを相談できるフリースペースを設けた話題を振ると、「知らない。ああいうところ信用してない」「誰も信用してないよ。大人みんな信用してない」。
「ドン横」といわれた場所は、再開発のために封鎖されました。それでも少女たちが栄に集まっていると聞きました。7月、その理由が知りたくて周辺を巡りました。
「ドン横」といわれた広場は6月に再開発のため閉鎖された。《キッズがたまるならオアシスでは》と取材で聞いて、7月にもオアシス21周辺を巡った。
平日の午後7時半ごろ、スマホで自撮りする少女2人がいた。同じ16歳だったが、格好は全く違う。上下黒を基調として、濃いめのアイメイク。2人は「地雷系」と自称した。
ひとりは隣県から来たという。「地元は地雷系が全然いない。私が歩いてるとジロジロ見られる」。装いが溶け込めると感じるのも心地良い理由のひとつだ。
もうひとりは県内在住だという。「ドン横歩いてたらみんなに会えるのがうれしい」。隣の少女とはSNSで知り合った。週3~4日は飲食店でバイトしているが、「彼氏がいなかったら(パパ活や援助交際を)してると思う。そっちの方が稼げるし……」。
両親は早くに離婚した。母親とケンカした時に、「あんたなんか産まなきゃ良かった」と言われた。「家に帰りたくない。月のやつ(月経)がきついけど、バイト休んでると親に行けよって言われる。わかってくれない」。実家にはずっと居づらさを感じる。
午後10時ごろ、スマホに母親から着電があった。別れ際、独り言のようにつぶやいた。「大人たちが変わって、うちらみたいな思いをする人が少なくなれば良いのにと思う」
■少女たちに近付いた「ドン横…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル