『人のセックスを笑うな』でデビューし、社会の価値観を問う作品を発表してきた作家の山崎ナオコーラさん(41)。新作エッセー『ブスの自信の持ち方』では、容姿差別をテーマにすえた。ネット上で「ブス」と激しい中傷を受けたとき、「容貌(ようぼう)障害」という言葉に救われたという山崎さんは、容姿によって生きづらいと感じさせる社会の側が問題だ、と訴える。
◇
小説家としてデビューした2004年、ある新聞社が授賞式で撮った「ひどい顔写真」がネットに拡散され、おぞましい中傷や性的な愚弄(ぐろう)を受けました。「ブスは身の程をわきまえて表舞台に立つな」と言いたいのだろうと感じました。
私はブスです。自分でもそう思います。だからと言って差別されるいわれはありません。
周囲に相談すると、「あなたはブスじゃない」「気にしないように」と、私の意識を変えるようにアドバイスされました。容姿に関わる本を読むと、美人になる方法ばかりが書かれていました。「ブス側が変わらないといけない」との考え方に違和感を覚えました。
そんなとき、顔にコブがある藤井輝明(てるあき)さんが書いた「容貌障害」に関する本を読み、「ブスが悪いわけではない」と救われました。顔の傷や変形、アザといった、外見に症状がある人たちが周りからジロジロ見られ、就職や結婚が難しいなら、社会の仕組みや雰囲気を変える必要があります。同じように、ブスで生きづらさが生じるのも、本人ではなく社会の問題です。
今はネットを通して、様々な外見があることがわかるようになった。個性的な顔立ちや体形をいかし、前向きにおしゃれをする風潮もあります。(容姿を理由に他の人と違う扱いを受けて苦しむ)容姿差別も減るのではないかと期待しています。
一方で、私のように「美」にあまり興味がない人もいます。「ブスのままでいいよ」と、努力しない選択肢も認めてほしいです。(聞き手・岩井建樹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル