新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、大阪府の吉村洋文知事が20~22日の3連休に大阪-兵庫間での不要不急の往来自粛を要請した政治判断に対する評価が分かれている。リスク認識の共有という点で一定の意義を果たしたとする声がある一方、法的根拠のない緊急時の対応は広域連携などで課題も残した。
■「超法規的措置」
「いつオーバーシュート(爆発的患者急増)が起きても不思議ではないという危機意識を持ってもらう目的は果たせた」
吉村氏は23日、自粛要請の意義について府庁で記者団にこう述べた。
“超法規的措置”の根拠となったのが、厚生労働省が府に文書で示した専門家の提案だ。
吉村氏が公表した文書では、19日までに大阪と兵庫で想定される感染者数は78人だが、何も対策をしなければ、最悪の場合20~27日は586人と約7・5倍に増え、28日~4月3日には3374人に急増すると指摘されていた。
また、感染者1人がうつす二次感染者の平均値で、1を上回ると感染爆発の可能性がある「実効再生産数」も危機感を強めた。
文書は今月5~12日の実効再生産数について大阪は「次第に1を下回る傾向」とする一方、兵庫は「常に1を上回っている」と言及。その上で「今後3週間の大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」と提案していた。
厚労省の担当者は往来自粛の対象範囲を「大阪-兵庫間に限った話ではない」と説明するが、吉村氏は期間と範囲の双方に絞り込みをかけた。
一方、兵庫県の井戸敏三知事は「3連休だけと期限を区切っているわけではない」と公言。連携の悪さが目立った。
■「モデルケース」
効果や影響はどれほどあったのか。
鉄道各社は3連休中も通常ダイヤで運行。いずれも期間中の利用者数は出していないが、阪神電鉄の担当者は「19日から開催予定だった選抜高校野球大会が中止となり利用者が減った。今回の要請でさらなる影響がある」と嘆いた。
レジャー施設も余波を受けた。大阪からの来園者が2~3割を占める神戸どうぶつ王国(神戸市中央区)は、入園料を値下げして20日から営業を再開したが、3連休中の来園者は前年同期比で約6割減少。支配人の永田雅寛さん(46)は「来園者が減ったのはつらいが、ウイルスが広がることを考えると受け入れざるを得ない」と語った。
ただ、関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は「吉村知事が明確に往来自粛を呼び掛けたことは、緊急時の自治体対応のモデルケースになる。市民の噂から始まる社会不安を減らすために、首長のメッセージから曖昧(あいまい)さを減らすことが重要だ」と指摘する。
今後、同様の要請を出す可能性について、吉村氏は「今の段階では考えていない。オーバーシュートに入り始めたときは躊躇(ちゅうちょ)なく対策を取りたい」と語った。
オーバーシュートのような危機が発生した場合、首相が改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、緊急事態宣言を発令。対象区域に指定された都道府県の知事は住民に外出の自粛などを要請できるが、国民の私権を制限するだけに慎重な判断が求められる。吉村氏は「法律に基づくのが本来あるべき姿だ」として、今回は異例の対応との認識を示した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース