国民民主党の森ゆうこ参議院議員による「質問通告」に端を発する騒動が注目を集めている。国会で使われる答弁の作成のため、国会議員からの質問案を待つ「国会待機」に拘束され、長時間労働が常態化してきた霞が関の官僚たち。「働き方改革」が叫ばれる中、「質問通告」、「国会待機」そしてこのままで良いのだろうか。ジャーナリストの堀潤氏は、国会における議論のあり方こそ問われるべきだと指摘する。
■「未来について語り合り国会を」
官僚の皆さんは、これからの日本にどういった点を取り入れていけばいいのかといったことも含めて、色々なことを良く知っています。さらに見聞を広めてもらうなど、その時間やエネルギーをもっと別のことに使って欲しいですよね。今の状況は非常にもったいない感じがします。
だからこそ情報漏洩だと言って犯人探しをしたりするより、こういう事態が起きる根本にある問題を解決するための知恵出しをしてはどうでしょうか。役人が働きづらい環境を国会議員が作ってしまっているのはそのとおりでしょうし、そもそも質問内容の事前通告は情報公開の対象でしょう。森さん自身も“来週はこういうテーマの話をします”ということでツイートされていますし、むしろここは“違う観点のアイデアがあれば教えて下さい”と、開かれたものにしていく努力をした方が良いのではないでしょうか。
ですから、これは国会議員の質の問題でもあると思いますよね。先日『朝まで生テレビ!』に出演して、各党の若手議員に話を聞いたのですが、官僚制度の改革が必要だとか、そんな話は昔からしてきたし、わかっている、もういいと思いました。そもそも官僚が議員の質問に付き合って夜中まで残業しないといけないのは、答弁する大臣のためでもある。派閥の“待機組”を入れてバランス良く人事を配置します、みたいにしているからこうなる。その分野の専門知識がある議員、場合によっては民間登用でいいじゃないかと、そのくらいの改革が必要でしょう。
さらに言えば、国会では後ろ向きの話が多いですよね。ちょうどフィンランドからの視察を終えて帰国した森まさ子・元少子化相とイベントを開いたのですが、フィンランドの国会には“未来委員会”というのがあり、50年後、100年後のあり方を議論するそうです。
日本の国会にも各種の委員会がありますが、実際、予算委員会などは与党を追及する場になってしまっているし、資料は黒塗りだったり、改ざんされていたり、破棄されていたり。そんな中で攻める側はファクトがきちんと得られていない中、ただ“問題じゃないか”と指摘するだけで終わってしまう。そういう姿ばかり見せられていたら、若い世代はうんざりするでしょう。
ここは過去の問題の検証の場と、未来についての提言を語り合う場を明確に分け、メディアやIT企業と連携して、国民の関心事をすくい上げ、未来について語り合っているという実感ができる場を設ければ、国会中継の目玉のひとつになるでしょう。
先日、自民党本部で青年局が全国の若手地方議員を集めた会合を開いたので見に行ってきました。先ほどの『朝まで生テレビ!』にも出演していた小林史明議員が青年局長に就任していますが、そこではLINE、Facebook、Twitterの3社から担当者が来ていて、災害時の活用方法など、ITを使った課題の解決について情報を共有していました。やろうと思えばできるはずです。
とにかく今の日本は足踏みをしている状況にはありません。現場と政治を直結するためにも国会にもっとテクノロジーを導入し、未来について各論を丁寧に議論してほしいですよね。
■プロフィール
1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜レギュラー)などに出演中。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース