東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の元理事に賄賂を渡したとして贈賄罪に問われた広告大手「大広」元執行役員の谷口義一被告(58)の初公判が17日、東京地裁であった。谷口元役員は「元理事がみなし公務員になる前に交わした約束に基づいて金を支払っただけ」と賄賂性を否定し、無罪を主張した。一連の公判で贈賄側が起訴内容を否認するのは初めて。
組織委はスポンサーの獲得業務を広告最大手「電通」に委託。電通は組織委の承認を得たうえで、一部業務を「販売協力代理店」として他の広告会社に再委託できる仕組みだった。
起訴状によると、谷口元役員は組織委の高橋治之元理事(79)=受託収賄罪で起訴=に対し、大広が協力店として英会話大手のスポンサー契約を担当することや協賛金の減額などを依頼した。高橋元理事は知人のコンサル会社を受け皿に2019~22年に計約1520万円の賄賂を受け取ったとされ、谷口元役員は公訴時効を踏まえて約650万円分で起訴された。
検察側は冒頭陳述で、谷口元役員が14年1月までに高橋元理事から「組織委理事に就任する見込み」と伝えられ、同月にはスポンサー契約締結によって大広が電通から得る手数料を折半するよう持ちかけられて了承したと指摘した。
弁護側の反論は
同年6月に理事に就いた高橋元理事は、大広が担当する英会話大手がライバル社と共にスポンサーになれるよう電通に指示し、英会話大手には五輪とラグビーW杯日本大会のセット販売を持ちかけたという。
特に問題になったのは協賛金の額で、検察側は谷口元役員が18年に高橋元理事に「減額を考えてほしい」と求めて実現したと指摘。こうした行為はみなし公務員である組織委理事への「請託」にあたり、谷口元役員は「元理事による様々な後押しへの対価」と認識しながら賄賂を送金したと主張した。
一方、弁護側は冒頭陳述で、五輪特措法の施行で高橋元理事がみなし公務員になったのは15年6月である点を強調した。送金は「公務員になる前の高橋元理事と合意した約束に基づいて支払ったに過ぎない。対価性はなく賄賂ではない」と反論した。
みなし公務員について元理事から説明はなく、理事就任後も「贈賄罪の適用対象者になる認識はなかった」と述べた。協賛金の減額などは谷口元役員ではなく英会話大手からの要望で、「請託にあたらない」とも強調した。(横山輝)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル