三重県桑名市の多度大社で催される県無形民俗文化財「上げ馬神事」について、主催側が神事の内容を見直すことを決めた。元文化庁文化財調査官を務めた石垣悟・国学院大准教授に祭りや神事など「無形民俗文化財」のあり方、これからについて聞いた。
上げ馬神事
700年近い歴史を持つ三重県の無形民俗文化財。同県桑名市の多度大社で例年5月に開かれ、若者が馬に乗って坂を駆け上がり、高さ約2mの土壁越えに挑む。4年ぶりの開催となった今年、「動物虐待だ」といった批判が殺到し、来年からは内容の見直しを迫られる事態となった。
――民俗学の視点から、「上げ馬神事」についてどのように見ていますか
行事は非常に興味深いです。愛媛県今治市菊間町の加茂神社の「お供馬の走り込み」や長野県大町市の若一王子神社の「子ども流鏑馬(やぶさめ)」(いずれも県指定文化財)など、子どもが馬に乗って出るという行事は各地にある。子どもが神様または神の化身として認識され、当の子どもには一人前になるための通過儀礼としての意味もあります。
また馬を「神の乗り物」とするのもかなり古くからある習俗。神社に奉納する絵馬も、かつて馬を奉納していた名残です。民俗学的に見れば、上げ馬神事は「馬を使った日本らしい典型的な行事の一つ」とも言えると思います。
――動物愛護などの観点から批判が出ました
地域における馬の役割は、この神事が始まった当初と比べたら変わっていると思います。昔は農耕馬のような自分の家の馬、つまり労働力として使っていた馬を神事にも出していたと思いますが、今では神事のために馬を融通している面もあるでしょう。人々の馬に対する向き合い方も変化しているという点は否めないのではないでしょうか。
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――解決策を見つけるために必要なこととは
まずは詳細な民俗学的調査を…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル