兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に男が侵入し、散弾銃で記者2人を殺傷した事件から3日で36年がたった。支局1階に設けられた祭壇には亡くなった小尻知博記者(当時29)の遺影が飾られ、訪れた市民らが手を合わせた。
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に引き下げられる前のため、今年も記帳台は設けず、3階の事件資料室の公開も見送った。事件が起きた午後8時15分、支局では朝日新聞社員らが黙禱(もくとう)した。
支局を訪れた大阪府寝屋川市の公務員、東浦孝次さん(52)は「言論を暴力で封じることを許してはならない。いいたいことが言えて、みんなが笑って過ごせる世の中であってほしい」と話した。
記者志望の大学4年、井村春花さん(22)=大阪市=と鹿野海人さん(21)=京都市=も遺影に手を合わせた。井村さんは「事件を風化させないためにも、私たちは明日もしゃべり続けなければいけないと思いました」と話した。
広島県呉市にある小尻記者の墓では、朝日新聞大阪本社の山浦一人(かずと)・編集局長らが手を合わせた。
山浦局長は「いろんな人がいろんな考えを持ち、いろんなことを話し合うことで民主制は保たれる。異なった意見を暴力で封じることがあってはならない」と語った。暴力に屈せずペンを持ち続ける、と墓前で誓ったという。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル