原爆投下から78年。世界に存在する核弾頭の数は今も約1万2500発あり、ウクライナに侵攻したロシアは「核の脅し」を続けている。「核の惨禍」を経験した私たちは、核とどう向き合っていけばいいのか。政治学者で長崎県諫早市の学校法人・鎮西学院学院長の姜尚中(カンサンジュン)さん(72)に聞いた。
学院に語り継がれる「War is Hell!」
――8月9日をどのような重みで迎えますか。
78年前、長崎市にあった鎮西学院(当時・鎮西学院中)は被爆で校舎は壊滅、教職員や学生ら140人あまりが一瞬のうちに亡くなりました。千葉胤雄(たねお)教頭が書いた日記に心打つフレーズがある。「War is Hell!」(戦争は地獄だ)。その言葉は今でも学院に語り継がれています。どんな戦争もいけない。戦争の究極の形態を体験したが故の言葉。8月9日は平和を肝に銘じる日です。
被爆した長崎の人は皆、平和が重要だと共通して認識し、70年以上にわたり毎年語り伝えてきた歴史がある。被爆体験者が減る中で記憶を伝承していくことが大切です。どんな形であれ、非戦を言い続けていく必要があります。
――核廃絶をめぐる現在の動きをどうみますか。
ロシアとウクライナの戦争の行く末が、今後の核軍縮の方向性に大きな影を落とすかもしれません。
ロシアを戦略的に敗北させようとし、米国や西側諸国はウクライナに武器援助をしています。ただ、こうした限定された目的の戦争は現代では成り立たないのではないだろうか。
「核戦争の局面に近づきつつある」
英国の歴史家E・H・カーも著書「危機の二十年」の中で、第1次世界大戦を経験した世界はなぜ、第2次世界大戦を防げなかったのかを論じている。戦争は怪物に化ける。侵略国も被害国も支援国も制御不可能になる。私は、少しずつ核戦争の局面に近づきつつあると感じています。
――なぜですか。
節目は「非人道兵器」と言わ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル