60年超の原発運転を認める「GX脱炭素電源法」が成立した31日、福島県いわき市の喫茶店主、嶋崎剛さん(65)はニュースを見てため息をついた。「大転換なのに、社会の関心は低いまま」。それでもタブレットに残るメッセージを見て、自らを奮い立たせる。
《頑張って!》
送り主は3月に亡くなった音楽家・坂本龍一さんだ。反原発の牽引(けんいん)役として福島を訪れた際に知り合い、SNSで交流を重ねた。
「この励ましはきっと、私だけではなく、もっと多くの人に向けた言葉だったんですよね」
地元から北約50キロにある東京電力福島第一原発の事故で、人生が翻弄(ほんろう)されるとは想像もしなかった。
「たかが電気のために」 思い重なった坂本さんの訴え
事故が起きた2011年3月以降、市内では自主避難する人が相次いだ。嶋崎さん一家は地元に残ったものの、脳の病気を患っていた母は病院の職員らがいなくなったことで適切な治療やリハビリができなくなり、急速に体力が低下。3カ月後に他界した。
「原発は一人一人の生きる権…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル