九州本土からフェリーで25分。世界遺産もある大島(福岡県宗像(むなかた)市)に来た20代女性の目的は、観光ではなかった。
昨年10月29日、人口約550人の島は、秋の大祭で各地域から家族が集い、にぎわっていた。
島民たちが歌い踊る演芸大会で祭りを締めくくった午後3時過ぎのことだ。いずれも大島在住のアルバイトの田志正弘さん(70)と漁師の田志龍吉さん(66)、藤島一政さん(80)の3人が後片付けのため、島の北部にある宗像大社の沖津宮遥拝(ようはい)所に向かうと、リュックサックを背負った20代の女性が1人、海を見つめていた。
海を隔てた先には、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の中核をなす沖ノ島がある。沖ノ島に上陸はできないが、春と秋の大祭は、島を拝むために遙拝所が開かれる数少ない機会だ。
「神様、見にきたんか?」。正弘さんが声をかけた。
女性はびっくりしたように「あっ」と声を上げた。「神様って、なんですか」
その返事に、3人は「おや」…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル