なんだかんだいって「長幼の序」が意識される日本社会。あちこちに「長老」がいて、影響力を発揮しています。「老害」とも呼ばれ、逆風が吹くなかで、長老の役割と引き際を考えます。
坪内知佳さん「脅しや嫌がらせ何度も。毎日頭を下げた」
山口県萩市で、三つの巻き網船団を束ねた漁師集団「萩大島船団丸」の事業を、10年前に始めました。現在では萩のほか、千葉や鹿児島など全国6カ所の船団の経営管理も手がけていますが、60歳くらいの船団長が漁師を率いる、ばりばりの「男社会」です。
もともと漁業には全く縁はなく、偶然知り合った萩の船団長から「このままでは経営が厳しくなる一途。何か新しいことを考えてくれ」と声をかけられたのがきっかけでした。そんな「素人の女」が事業計画を作ったんですから、最初は漁師たちから反発を買いました。「若い女に何が分かる」と何度も言われました。
一番厳しかったのが、私に声をかけた船団長でした。もともと漁師の仕事は、魚を取って水揚げしたら、おしまいでした。でも、私が直販や店への卸販売を始めたことで、血を抜いたり、箱詰めをしたり、新しい仕事が増えた。かといって、すぐに収入が増えるわけではありません。
船団長は、そんな漁師たちの不満をよく知っている一方で、「やらなきゃいけない」「このままでは漁業がだめになる」という危機感も強かった。プライドは高いし、頑固だし、パソコンだって使えない。でも、漁場や魚のことは誰よりも知っているし、漁師をまとめる力もあります。こういう人を「長老」というのかな、と思います。
「やめろ」「わかった、やめてやる」と何回も大げんかをし、一時的に現場を離れたこともあります。衝突しても、良い水産業の未来のために同じ方向に向かって進んでいる、と信じていました。実際に「戻ってきてください」としゅんとした声で言われると、いとおしさも感じましたね。
記事の中盤以降では、俳優の宝田明さんが「生き方が演技に表れ、お客様に喜んでもらうのが、本物の長老」と語ります。また、三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光さんが経済界の視点から論じています。
こういう長老たちとぶつかりあいながらも、善きを守り、悪(あ)しきを改善しながらどうしたら前進できるのか折り合いをつけ、バトンを受け取って次の代につないでいく役目が、私たちの世代にあるのだろうと思います。
ただ、「弊害」でしかない長老…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル