新型コロナウイルスの感染拡大で、引きこもりの人や家族はこの間、さまざまな影響を受けた。親子が同居する家庭は外出自粛によりストレスが生まれ、悩みを明かす当事者の会を開けない地域もあった。支援現場の状況をNPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」副理事長の境泉洋(さかいもとひろ)・宮崎大准教授(臨床心理学)に聞いた。 【データ】引きこもりの原因やきっかけ
-KHJ家族会は、本人が能動的に家にいるとの誤解を与えないため「ひきこもり」という表現を使っている。コロナで当事者や支援にどんな影響が出た?
「親子関係の悪い家庭は特に苦しかった。親が家に長くいるため、ひきこもりの子どもとけんかになるなどのトラブルがあった。コロナで収入の減った親が、子どもに『自立してほしい』とプレッシャーをかけることもあったようだ」 「本人が相談支援機関や当事者の居場所とつながりを持てるようになったのに、コロナで行けなくなり、スタッフによる家庭訪問もできなくなった。収束した後、再びこれらの場を利用できるか不安がある」
-就労への影響は。
「コロナで有効求人倍率が悪化し、社会に出る壁が高くなった。企業は即戦力を求め、ひきこもりの人は後回しになる。バブル崩壊後に不況で雇用環境が悪化し、ひきこもりの人が増えたように、同じことが起こる恐れはある」
-逆に発見もあった。
「ひきこもりの人は、世の中が動いていると『みんなと違って自分は…』とプレッシャーを感じる。緊急事態宣言による外出自粛で、日本全体がひきこもりのような状態になり、重圧が弱まった面はある。周囲も本人の大変さが分かったのでは。理解につながれば」 「外出を自粛し、3密(密閉、密集、密接)を避けるのは、ひきこもりの人にとって普段の生活に近い。テレワークなら自宅で仕事ができ、外に出るというハードルを越えなくていい。十分な収入を得ることができるかは別として、今のままでも社会参画や就労に踏み出せる可能性ができた」
-コロナ禍で見えた親子のトラブル防止策は。
「ひきこもりの人に家事をはじめ、親と助け合う『生活力』があるかが大事。これがないと、親も『なんとかしないと』と圧力をかけてしまう。仕事はできなくても生活力があれば、長い目で立ち直りを見守ることにつながる。その力はひきこもる前から身に付けるもので、大人にも責任がある」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース