能登半島地震の被災地では、危険と書かれた赤い紙の貼られた建物内でうずくまったり、倒壊した家屋付近を徘徊(はいかい)したりしているネコの姿が見られる。倒壊した建物などから逃げ出し、行き場を失ったとみられる「被災ネコ」を捜し保護している夫婦が、石川県輪島市にいる。
「輪島朝市」で暮らしていた漆芸家の桐本滉平さん(31)と妻の萌寧(もね)さん(27)。自宅兼工房が地震で倒壊、火災で全焼した。2人は初詣に出かけていて無事だったが、飼っていた3匹のネコが行方不明になった。
2人は地震翌日から毎日、朝市周辺に出向き、3匹を捜し続けていた。ネコが動き出す朝と夕方の2回、自宅跡の近辺で3匹の名前を呼ぶ。そんな桐本さんのことが、地元の口コミやSNSで広がり、同じように行方不明の飼いネコを捜している被災者から連絡が入るようになったという。
行方不明のネコが戻ってくるのを待って、避難所から2次避難することを控えるお年寄りがいることを、桐本さんは心配している。そこで、LINEなどを使ってネコを見かけた場所の情報などを共有、自ら探したいという人には、捕獲器の設置方法を教えた。
27日までに、26匹を捕獲。うち14匹は飼い主と無事再会することができたという。
桐本さんは、飼い主が見つからないネコや、被災して飼い主の元に帰れないネコを一時的に保護している。避難している場所の近くに、活動を支援する企業から提供を受けた、ソーラーパネルで蓄電できるコンテナハウスを設置、常時8匹程度を預かっている。
「輪島朝市」でアイドル的存在だった地域ネコの「ちいちゃん」も保護した。避難所を離れて生活できるようになれば引き取りたいと申し出る人もいるという。
桐本さんは、火災で漆や作業の道具などが燃えたため、仕事を再開するめどが立っていない。「えさ代など出費も多い。行政などで一時的にでもペットを保護してもらいたいが、避難者の対応、インフラの復旧や行方不明者の捜索などで大変な状況なので言い出せない」と話す。
19日、夫婦で飼っていた行方不明の3匹のうち、「グラ」の亡きがらが警察の捜索で見つかった。「グラは残念だが、あと2匹は生きているかもしれない。できる限り捜し続ける」という。(小宮路勝)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル