自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑が刑事事件に発展しました。ドキュメンタリー映画の制作現場で「カネ」に頼れない候補者たちを追ってきた監督・プロデューサーの大島新(あらた)さんは「驚くべきことが起きているのに、驚きがない」とため息をつきます。
「考え違い」をしていないか
――12月19日、自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)と、志帥会(二階派)の事務所に、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで家宅捜索に入りました。
捜査がどこまで伸びるか予測できませんが、会計責任者の立件にとどまるのか、国会議員が起訴されるのかで、これまでの「政治とカネ」の問題との違いが見えてくると思います。
――今回これほど疑惑が広がった背景について、どのように考えていますか。
裏金を受け取っていた人たちは、根本的に考え違いをしているのではないでしょうか。国会議員とは立法府の一員で、法をつくる人たちです。それなのに法を守らない。あるいは、「抜け道」を探るようなことをしているわけですよね。
そもそも疑惑をかけられた人たちには、日本や社会をどうしたいのかというビジョンが明確に見えてこない印象があります。もしかしたら、国会議員は「おいしく、箔(はく)が付き、権力に近づける仕事」などと思っているのではないでしょうか。
岸田文雄首相もある意味で象徴的です。3月に福島県を訪問した際、子どもから「なぜ総理を目指したのですか」と聞かれ、「日本の社会の中で一番権限が大きい人なので」などと答えたと報じられました。
全員が同じだとは思いませんが、結局、国会議員でいることや、権力を持つことを優先すれば、選挙で勝たなければならない。選挙で勝つためにはカネが必要だという思考になるでしょう。
特に安倍派の大半は、いわば…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル