あふれた水が深刻な被害をもたらした熊本県の球磨(くま)川は、氾濫(はんらん)を繰り返す「暴れ川」として知られる。浸水を防ぐため、国や県はダムや堤防をつくり、宅地をかさ上げしてきた。対策が進んだことで今回、「川の水より山崩れを心配した」と振り返る住民もいる。警戒するべきは川か、山か――。災害発生時の避難の難しさが、改めて浮き彫りになった。
熊本県球磨村の神瀬(こうのせ)地区に住む犬童(いんどう)宏治さん(56)は記録的な豪雨となった4日、川岸に立つ自宅2階にいた。一帯は浸水対策として、宅地を2メートル以上かさ上げする工事を20年ほど前に済ませた。大雨のときは、むしろ、裏山の土砂崩れが心配だった。
午前5時ごろ。目が覚めると「ゴゴゴゴ」という音がした。窓の外を見ると、高台へ向かう人のひざの高さまで水が来ている。それでも、「2階におれば安全だろう」と思った。
だが、1時間ほどで水は1階をのみ、2階に迫った。避難ができない。さらに1時間たった午前7時ごろ、水の勢いが止まった。「山はどこが崩れてもおかしくないが、川の水は来ないという油断があった」と犬童さんは話す。地区では犠牲者も出た。
避難した高台は土砂災害警戒区域
たびたび氾濫してきた球磨川の…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル