池田拓哉
かんぴょうの生産量が全国で9割以上を占める栃木県。県干瓢(かんぴょう)商業協同組合(下野市)が企画した「かんぴょうレシピコンテスト2021」のグランプリが決まった。「賞金20万円」の魅力もあって、主催者の予想をはるかに超える1501点の応募が県内外から寄せられた。
最終審査が11月上旬にあり、グランプリにはイチゴジャムで味を調えたかんぴょうのパイ。東京都の女性(29)が考案した。組合によると、女性はSNSでコンテストを知り、自宅にかんぴょうをよく送ってくれた県内の親類を思い出し、自宅の冷凍イチゴジャムを使ったスイーツがひらめいたという。審査員から「ジャムで煮たかんぴょうがおいしく、お菓子にもできるという新しい発見があった」と高く評価された。
「手毬寿司(てまりずし)」やコーヒーアイスなども見栄えや斬新さが評価され、賞金3万円が贈られた。最終審査に残った10点の作品とレシピは組合のウェブサイトで見ることができる。
コンテストは、需要低迷に苦しむ県産かんぴょうの普及を狙って企画された。安価な中国産の増加もあって、県内産は約40年前の5%まで激減している。コロナ禍で販売促進イベントが中止になったため、浮いた予算を賞金に回した。
6月から8月にかけて募集した。7月末までに約200通の応募があり、最後の1カ月で一気に1300通も寄せられた。うち高校生を含めた学生から約600通の応募があった。組合事務局長の猪瀬豊子さんは「コロナ禍で自宅で料理をする機会が増えた影響もあるでしょうが、やっぱり20万円の魅力は大きかったですね」。500通ぐらいの応募を見込んでいたという。
審査員は組合役員ら12人で、普段は料理をしない男性がほとんど。猪瀬さんも加わり、ほかの審査員には家族総出で料理と試食をするようお願いした。
猪瀬さんは約50点の応募作品を実際に作ってレシピの的確さを確認した。「せっかく見栄えがよくても味がレシピ通りにならないものもありました」。だからこそ、最終審査に残った10品は自信を持って薦められるという。
40~50年前、猪瀬さんの地元の上三川町では、夏休みの早朝ラジオ体操の時間帯に、あちこちでカンナで夕顔の果肉を薄くむく風景が見られたという。「『シューッ、シューッ』という音と真剣な表情は覚えている。かんぴょうは地域の誇り。夫に『きょうもかんぴょう料理か』と言われながら、プライドを持って審査しました」(池田拓哉)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル