小海(こかい)智恵子さん(27)には仕事柄、気になることがある。
駅からの道をゆっくり歩く。段差はないか。坂道があれば避けて通る方法はないか。スーパーや郵便局、銭湯、コインランドリー、バス停は近くにあるか。車は使わず、自分の足で確かめる。
佐藤仁さん(74)の新居になったアパートを下見で訪れたときもそうだった。
昨年12月中旬、東京都大田区にある4階建てアパートの1階。まだカーテンのない窓を開けると、冷たい風が10・25平方メートルのワンルームを吹き抜けた。
小海さんから鍵を受け取った佐藤さんは笑顔だった。「荷造りで昨晩は徹夜だった。新生活はうれしいけど、まだ実感がわかないね」。電動でリクライニングができるベッドが運び込まれ、生活感が漂った。
年の瀬の引っ越しには理由があった。
佐藤さんは北海道出身。1年…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル