震災とコロナ。ふたつの緊急事態を結んで見えるのは民主主義の代表制の欠陥だ、と若手憲法学者のエース、江藤祥平さんは言う。解決のキーワードは「くじ」だという真意を聞いた。
――コロナ禍で緊急事態宣言が出される中、東日本大震災から10年という節目が近づいています。
「この国では、もう一つの緊急事態宣言が続いています。そのことを忘れている人も少なくないのではないでしょうか。震災当日、東京電力福島第一原発の事故を受けて発令された原子力緊急事態宣言のことです。原発から20キロ圏内に避難指示が出され、住民は強制避難を余儀なくされました。それから10年、放射能汚染の危険が残っている地域もあり、宣言は解除されず、故郷に戻れない人たちがいます。住み慣れた土地を今も奪われているのです。しかし、福島から遠くに住む『我々』は、まるで緊急事態などないかのような錯覚に陥っているように思えます」
「災害では、社会的に弱い立場にある人ほど大きな影響を受けやすい。ソーシャルメディアで『頑張ろう』と呼びかけている人々は、まだ恵まれた環境にいます。本当に苦しい立場にある人々は、声を上げることすらできず、社会からも見えない。声なき声が、福島を忘れて原発事故の教訓を風化させている現状を告発しています」
「汚染水や廃炉などの問題が山積した福島という『異空間』が、圧倒的な現実として、私たちの社会のあり方、統治の仕組みはこれでよいのかと迫ってきているのです」
――どういうことでしょうか。
「原発が超長期的に利用できる…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル