食材の仕分け作業、洗剤の詰め替え、洗濯物の下洗い…。 これらの「名前がない家事」のしんどさ、なぜパートナーは理解してくれないの? 名前のない家事を分担する為に必要なことについて、生活史研究家の阿古真理さんがハフポスト日本版に寄稿しました。 ———————–
名前のない家事はシェアが難しい
2010年代後半、家事省力化を求めるムーブメントが起こった。その議論で浮上してきた言葉に、「名前のない家事」がある。この言葉ができたことによって、可視化されるようになったことは多い。 掃除・洗濯・料理・育児、ケアなどといった名前のある家事はシェアや外注をしやすいが、名前のない家事はシェアが難しい。そして、家事の担い手の負担になっているにもかかわらず、名前がないことによって、その負担がより見えにくくなっている。 では、名前のない家事とは、どういうものなのか。例えば、買い物から帰ってきたら、野菜は野菜室へ、肉はチルドルームや冷凍庫へ、と仕分けをしながら収納する作業が発生する。葉物を新聞紙に包んでビニール袋に入れる、肉を小分けして袋に入れ、日付を書くといった作業をする人もいる。洗剤などを詰め替え容器から移し替える、といった作業が発生する場合もある。こういった細かい作業が、名前のない家事だ。
名前のある家事の周りには、名前がないたくさんの細かい作業が
洗濯をする際、下洗いをする人もいる。シャツの首回りにせっけんなどをこすりつけておく、下着も下洗いする、漂白剤に浸けておくなどした後に洗濯機に入れる作業も名前のない家事の一つだろう。洗濯時に衣類を裏返す手間をかける人だっている。 ゴミ捨ての前後にも作業がある。ゴミ箱を家中のあちこちから集める。生ゴミの容器などは、捨てた後にゴミ箱の汚れを洗う作業が発生する場合も。生理用品用など水分がついたものが入る容器は、ビニール袋をセットすることも必要かもしれない。そして、ゴミを捨てた後は、ゴミ箱を所定の場所に戻し……。 子供が小学校に上がる際など節目のときは、学用品に名前を入れる、給食袋などを用意する、といった作業が膨大に発生する。 「育児」という名前の陰に隠れている作業はたくさんあって、乳幼児がいるときは、食事回りだけでも子供用の料理を別に作る、食べさせる、食べこぼしたテーブルを拭く、汚した衣類を洗うといったことが必要になる。子供が歩き回る場所から、つまずきそうなもの、口に入れたら危なそうなものをこまめに片づけるなどの作業も発生する。 名前のある家事の周りには、名前がないたくさんの細かい作業が発生しているのだ。やっかいなのは、それら一つ一つは小さく、ついで作業に過ぎないのだが、たくさんあるためにいつの間にか大きな負担になっていることだ。よく「お母さんがじっとしているところ、見たことがない」などと言われるのは、彼女が日々、名前のない家事に追われているからではないだろうか。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース