国立がん研究センターによると、日本人の二人に一人が生涯でガンになるという。完治するケースも多いとはいえ、どうしても死のイメージが付きまとう病だ。角島さくらさん(北海道・立命館慶祥高校3年)さんは、子どもながらにガンを患う父を必死に支えてきた。不安や悩みを胸に閉じ込め、葛藤してきた日々を振り返り、「ガンの家族を持つ子どもの心の痛みを知ってほしい」と訴える。(文・写真 野村麻里子)
父がガンに…中学生の自分は受け止められなかった
角島さんの父がガンになったと知らされたのは、中学1年の春だったという。
「父はどうなってしまうんだろう」
ガンという病気のイメージから、心は不安と恐怖でいっぱいになった。だが、闘病する父の手前、弱音は吐けなかった。苦しい思いを言葉にして伝え、受け取ってくれる相手がいない。孤独で押しつぶされそうだった。
ある日、張り詰めた心は、限界を迎えた。
「なんで、お父さんなの!おかしいよ!」
鋭い言葉へ変わり、母にぶつけることになってしまった。そのころを振り返って、「ガン患者の家族を持つ10代の子どもの心のケアが必要なのでは」という気持ちが募っていった。
10代の心のケアが必要
昨年の文化部の全国大会にあたる「全国高校総合文化祭」の弁論部門に出場し、ガンの家族を持つ10代の子どもが弱音をはけるようなコミュニティ作りの必要性を訴えた。病院には家族をケアする相談センターがあるが、開いている時間は学校があり、利用しにくいという。
角島さんが住む札幌市内にも支援するコミュニティがたくさんあるが、もちろん10代であっても参加できるものの同様に時間帯の問題で足が運びにくかった。
仲良しの友達も同じ境遇だと知った
「そもそも親や家族がガンを患っていることは、多分、カミングアウトしづらいことだと思います」と言う。中学1年のときから仲が良かった友人の父が、角島さんの父がガンになった同じタイミングでガンになっていた。それを知ったのは、高校生になってからだった。
「苦しんでいる子は自分だけじゃなくて、思ったよりずっと多くて、全然、珍しくないんだなとすごく実感しました。そういう風に自分と同じ境遇の人のために、コミュニティづくりを実現したい」
角島さん自分の立場が中学生や高校生の心を受け止められるような、「もう少し上」の立場になって、コミュニティを作って苦しむ10代に声をかけていきたいと考えている。大学に進学したら活動を本格的に行いたいと、目的ができた。
悪いことばかりではなかった
角島さんの父がガンになって4年が経つ。「大体5年くらいで完治って言われてて。再発を経て3年がたった今、父はすごく元気です。父親がガンになったというきっかけがあったからこそ、家族との時間って大切だなと思うようになりました。つらかった経験でもありますけど、悪いことばっかりではなかったのかなと今は思っています」
高校生新聞
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