文・白石和之、写真・井手さゆり
頭をなでる子どもの手を、べろんと伸ばした舌でなめる牛。おっとりした姿からは想像もつかない動作で観客の興奮を呼び起こす。
1トン近い巨牛同士が頭をぶつけると、「ゴツン」と骨の音が響き空気が震える。角を突き上げ、前に出ようと押し合う牛の目は充血して真っ赤に変わる。頭を合わせてから数分。最高潮を迎え優劣が見えかけたとき、もう一つのクライマックスが始まる。
「ヨシター」というかけ声で牛を奮い立たせていた勢子(せこ)たちが、あうんの呼吸で2頭の後ろ脚に綱をかける。興奮した牛は綱を持った勢子たちを引っ張り、頭を振る。その間隙(かんげき)を突き、命がけで角をつかみ急所の鼻をとると、牛は静まり、観客席から歓声が飛ぶ。
新潟県長岡市山古志(旧山古志村)の牛の角突きは千年の歴史があるとされる。四方を囲む山の斜面を切りひらき、棚田を増やしてきた土地だ。多い所で積雪が3メートルを超え、外に出られない冬のストレスにも耐える牛は農耕、運搬を助ける貴重な働き手だった。
「家族同然の大切な牛を傷つけないため、引き分けにするのがしきたりです」と闘牛会の松井富栄(とみえ)会長(39)が言う。だから、番付もない。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル