新型コロナウイルスの国内感染者が2万人に迫っている。どこで感染したか分かっていない人も一定の割合でおり、他人事ではない。にも関わらず、感染者に罵詈雑言(ばりぞうごん)が投げつけられる事案が後を絶たない。もし自分や家族が感染したら、それらの行動を取っていた人はどう感じるのだろうか。長く差別の対象とされたハンセン病元患者らを、19年に渡り取材してきた三重テレビ放送の小川秀幸報道制作局長(54)に論じていただいた。 ***
療養所訪問者の思い
「ハンセン病問題を通して、今後起こり得るであろう 新しい感染症に伴う人権侵害の恐れについて考えたいと思います」(50代・女性) 「“分からない”という恐怖がもたらす考えが、差別や人々の暴走を生むということを今回(ハンセン病で)学びました」(40代・女性) この文章が書かれたのは、昨年の秋。三重テレビ放送が、三重県や市民団体「ハンセン病問題を共に考える会」と共同で実施した「ハンセン病療養所フィールドワーク」(2019年10月)の参加者の感想文だ。
<※筆者注:文意が変わらない範囲で若干修正> フィールドワークには、医療、福祉、教育関係者や学生ら約30人が参加。岡山県にあるハンセン病療養所を訪ね、病気の概要や差別の歴史を学んだり、入所者から体験談を聞いたりした。
感想文の中には、こんな言葉も。 「科学的な根拠に基づき冷静に対処する社会が来るなら、ハンセン病になり大変な思いをされた方々も、少しは浮かばれるのではないでしょうか」 その数か月後に新型コロナウイルスの大流行で世界が苦しむことになるとは、誰が予想しただろうか。今となっては、意味深く感じられる文章だ。フィールドワークの参加者は、ハンセン病患者が受けたような差別が繰り返されぬよう願っていたのだが……。
ウイルスより恐ろしいもの
三重県では、新型コロナ感染者の家に対する投石、落書きのほか、SNS上での誹謗中傷も少なくなかった。 長年、ハンセン病元患者が一時帰郷する「里帰り」支援などに携わってきた寺田病院(三重県名張市)の寺田紀彦理事長は、こんな見方をしている。 「令和の時代になっても感染症に対する間違った認識、そして偏見は変わらないようです。ハンセン病はいずれなくなると思います。しかし、未知の細菌やウイルスは今後も絶えることはないでしょう。ウイルスの恐ろしさ以上に、人の心の怖さは、いつの時代になっても変わらないのです」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース