世界の高校生らが科学技術の自由研究の成果を競う「リジェネロン国際学生科学技術フェア(ISEF)2023」の表彰式が19日、米テキサス州ダラスであり、日本代表の3組4人が各研究部門の優秀賞(2~4等)を受賞した。64の国・地域から1638人が参加。日本からは11組18人が参加し、英語で研究成果や今後の展望をプレゼンした。
ISEFは世界最大の科学コンテストと言われ、日本からは「JSEC(ジェイセック)(高校生・高専生科学技術チャレンジ)」(朝日新聞社・テレビ朝日主催)と「日本学生科学賞」(読売新聞社主催)で高く評価された研究が出場する。コロナ禍でオンライン参加が続いていたが、今年は4年ぶりに渡米して発表した。
優秀賞を受賞したのは▽大阪教育大付属高天王寺校舎出身のブランデル葉奈さんによる「アリの秘密 アリはどうやって滑らかな壁に登っている?」(物理学・天文学部門2等)▽市立札幌開成中等教育学校6年の田中翔大さんによる「バイオリンのハーモニクス奏法における倍音の持続現象に関する数理的研究」(同3等)▽文京学院大女子高(東京都)3年の箕浦祐璃さん、光吉音葉さんによる「赤い紅の『見える緑』『見えない緑』『光る緑』~墨を用いて紅の緑色光沢を生み出す伝統的な手法の解析~」(材料科学部門4等)。受賞によって、4人は日本の文部科学大臣表彰も受ける。
優秀賞に加え、協賛団体などが選ぶ特別賞として、田中さんにアメリカ音響学会賞1等、ブランデルさんに科学による社会貢献賞2等がそれぞれ贈られた。また、「空気の微細な気泡と海水の鉄電解を用いたアンモニア製造法」を研究した静岡理工科大静岡北高3年の安藤優花さん、石垣美月さん、相原瑛莉星(えれな)さんが上海青少年科学教育社賞を受賞した。
受賞研究に加えて、今回日本からISEFに挑んだ研究は以下の通り。
・東京都立大1年(東京大教育学部付属中等教育学校出身) 河野百羽さん「光により誘導される根の緑化の発見」
・東京都立小石川中等教育学校6年 水谷紗更さん「炎光光度法を用いたエアロゾル粒子の濃度測定と可視化手法の開発」
・大妻多摩高等学校(東京都)3年 小笠原優海さん「心地良い『音楽』を『数学』で奏でる」
・慶応大1年(島根県立浜田高出身) 坂手遥さん、同高3年 横山麗乃さん、渉結名さん「植物乳液の防虫効果と利用法」
・山口県立徳山高3年 鶴丸倫琉さん、柴崎湧人さん「忍具『些音聞金』の解明と応用 ~忍具の謎を解き明かし、現代に役立てる~」
・群馬県立高崎高3年 高田悠希さん「スマート盲導杖『みちしる兵衛』」
・長崎県立長崎北陽台高3年 大森春音さん、浦川大輝さん「フトヘナタリの『表現型可塑(かそ)性』に関する研究」
(研究タイトルはいずれも日本国内のコンテストでのもの)
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●JSECを経てISEFで受賞した生徒のコメント
・田中翔大さん 特別賞のアメリカ音響学会賞は狙っていました。思いがかない、1等を獲得できてとてもうれしいです。あわせて優秀賞まで頂けて光栄です。指導頂いた東京大学グローバルサイエンスキャンパス(高校生向けの科学技術人材育成プログラム)の先生方や、お世話になった皆さんに感謝の思いでいっぱいです。これからも、音楽と数学の関係の研究を深めて、世界で勝負していきたいです。
・箕浦祐璃さん JSEC以降、研究をさらに深めるなかで大変な苦労がありましたが、報われて良かった、という思いでいっぱいです。将来、この研究を生かして、化粧品開発の分野で、いままでになかった新しいものを生み出していきたいです。
・光吉音葉さん 表彰式では興奮のあまり、気づいたら壇上にいて、「これは間違いではないだろうか、現実なのだろうか」という感じでした。みちのりは大変だったけれど、箕浦さんと一緒にやってきてよかったです。
・安藤優花さん 私は昨年に続いての参加でしたが、前回は渡米できずバーチャル参加で、結果を出せずにとても悔しい思いをしました。1年越しにリベンジを果たせたような思いでうれしいです。
・石垣美月さん 昨年は参加チームの一員に選ばれず、とても悔しかったのですが、今回こうして挑戦することができて成果も出せて、晴れ晴れとした気持ちです。
・相原瑛莉星さん 姉が以前にISEFに挑戦して結果を残せずにいたので、その思いを引き継いで頑張ってきたことが、結果として報われたような気持ちになれました。(小林誠)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル